研究課題
本研究において克服すべき課題は、β-hexosaminidase Aの活性中心近傍の環境を理解し、酵素の安定化を高める実用的なシャペロン化合物を見いだすことである。今年度は、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジンとイミノ糖の母核環構造を4員環から6員環まで変化させ、その変化に伴うHexA酵素親和性の変化について網羅的に調査を行った。このうちアセタミド基を有するピペリジン型イミノ糖DNJNAcおよびDNJNAcは、HexAに対しIC50値2.9 μMおよび1.8μMの値を示した。一方、環内の炭素原子を1つ減らしたLABNAcおよびXYLNAcではIC50値が5.9 μMおよび4.5μMと若干低下し、更に炭素原子を1つ減らしたAzetidine NAcでは358 μMと著しい活性の低下が認められた。これらの結果から、アセトアミド型イミノ糖に関しては、基質構造を擬態したピペリジンが最も適切であり、環サイズを縮小したアゼチジンでは親和性を失うことが明らかになった。次にメチルアミド型イミノ糖について同様に試験したところピロリジンアミド型のイミノ糖に非常に強力な阻害活性が認められ、先のアセトアミド型イミノ糖の実験で最も強い活性を示したDGJNAc比べ約60倍程度活性が増強されることが明らかになった。そこで、今回得られたピロリジンアミド型イミノ糖を親化合物とし、環内の窒素原子にエチルカルボン酸、ヒドロキシエチル、n-ブチルの各置換基の導入し、更なる活性の向上を試みた。しかしながら、いずれの化合物も親化合物と比べ約5倍程度の活性低下が認められた。また、ドッキングシミュレーションにより環構造を4員環から6員環まで変化させたメチルアミド型イミノ糖のコンフィグレーションを比較した結果、これらは非常に良い相同性を有していることも明らかになった。
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