研究実績の概要 |
申請者はInhAを標的としたin silicoスクリーニングから薬剤耐性を回避可能なAリングからDリングの4リング構造を有する新規化合物KES4の同定に成功した。本研究ではKES4の合成展開に特化したテーラーメード化合物構造ライブラリを構築し、より高い活性を有する誘導体化合物を結合シミュレーション手法で見つけ、有機合成し高選択性の次世代抗結核薬の候補化合物を創出する事を目指して研究を進めた。 本年度はKES4に特化したテーラーメード化合構造ライブラリから標的タンパク質との結合シミュレーションにより候補化合物を同定し,それら化合物の有機合成を行った。さらに、これらの化合物の抗菌効果の検証と培養細胞での毒性の検証を行った。その結果KES4よりも抗菌効果の高い新規抗菌化合物を5種類合成することに成功した。それぞれの結核モデル細菌(M. smegmatis)の増殖に対する50 %阻害濃度(IC50)はKES4が9.6μMに対し1.8μM, 2.2μM, 3.4μM,7.8μM, 5.0μMであり目的を達成した。一方,5化合物中3化合物は腸内細菌や培養細胞に対して有意な毒性は見られなかった。 研究期間全体を通じての成果としては,(1)KES4に特化したテーラーメード化合構造ライブラリの構築,(2)KES4をAリングからB,C,Dリングへ連結する新規合成経路を確立,最終的に(3) KES4より活性の高い5種類の新規類縁化合物の合成に成功したことがあげられる。本研究によってテーラーメード化合物構造ライブラリを利用した新規の創薬基盤が確立され,さらに本手法を用いれば結核菌に特異的な抗菌効果を有し毒性を有さない化合物を合成することが可能であることを示すことが出来た。In silicoの計算科学と有機合成を組み合わせた手法は、今後、自由な化合物の設計、探索を可能にすると考えられる。
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