研究課題
1.AKRの特異的阻害剤の創製:これまでに見出してきたAKR1B10阻害剤の構造情報と阻害強度及び阻害選択性の情報を基に、新たな誘導体を設計、評価した。具体的には、これまでで最も強力なAKR1B10阻害活性を示すが、構造類似酵素であるAKR1B1に対する選択性が低いクロメン誘導体の構造をベースとし、阻害活性と阻害選択性は共に高いが、細胞内安定性に問題があるカフェ酸エステル誘導体の構造的特徴をハイブリッドさせることで、新規誘導体12種を合成した。これら誘導体はいずれもAKR1B10に対するIC50値が12 nM以下の強力な阻害剤であり、これらの中で最も強力な阻害剤は過去に報告した最も強力な阻害剤KO79よりも強力であった。また、これまでのクロメン誘導体ではAKR1B1に対して5倍程度の選択性しか得られなかったが、今回合成した誘導体は全て20倍以上の選択性を示し、最も強力な阻害活性を示した化合物の選択性は約80倍であり、現時点で最も理想的な阻害剤であると考えられた。また、本化合物はその他のAKR酵素 (AKR1C1-4) に対しても高い選択性を示した。さらに、本化合物の細胞レベルでの有用性を評価したところ、AKR1B10による細胞内代謝を有意に阻害し、創傷治癒アッセイや増殖試験によって肺癌A549細胞の遊走能や増殖能に対しても阻害効果を示すことを明らかにした。2.AKRトランスジェニックマウスの作製:AKR1B10、AKR1C3のトランスジェニックマウスをCre-loxPシステムを用いて作製するために、両遺伝子を組み込んだ発現ベクターを調製した。現在、培養細胞を用いてCre発現ベクターとの共発現によるCre-loxPシステムの成立を確認しているところである。
2: おおむね順調に進展している
AKRの特異的阻害剤の創製に関しては、想定していた以上の結果が得られ、27年度に行う予定であった細胞実験についても一部有用な結果を得ることができた。トランスジェニックマウスの作製については当初想定していた発現系から、Cre-loxPシステムを用いた発現系に変更したため少し遅れているが、発現ベクターの作成には完了しているため、問題ないと考える。
研究は概ね順調に進んでいるため、申請書通りに研究は継続して行っていく。AKRのSNP評価については、NCBIデータベースには大量のSNPデータが含まれるが、網羅的であるため、疾患との関連性を評価することが難しい。そこで、対象を変更し、特定の疾患に関するSNPデータベースを用いることで、AKRのさらなる機能の解明にも繋がると期待される。
繰越額は53798円と少なく、繰越金が生じたことに関するとりわけ重要な理由は存在しない。使い切るのではなく、適切な時に適切な額を使用しようとした結果、差額が生じてしまったことによります。
上記理由のため、使用計画についても当初予定していたものからの変更はありません。
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Fitoterapia
巻: 101 ページ: 51-56
10.1016/j.fitote.2014.12.010