研究課題/領域番号 |
26460151
|
研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
遠藤 泰之 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (80126002)
|
研究分担者 |
猪股 浩平 東北薬科大学, 薬学部, 准教授 (60221785)
太田 公規 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (90347906)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 医薬分子設計 / 核内受容体 / エストロゲン受容体 / レチノイドX受容体 / アゴニスト / アンタゴニスト |
研究実績の概要 |
前年度の成果に基づき、選択的エストロゲン受容体制御薬(SERM)の開発を目的として、m-カルボランを基本骨格としたリード化合物として構造展開を行った。N,N-ジメチルアミノエトキシ基をパラ位からメタ位に変換した化合物は、最も強いER との結合親和性を示した。本化合物は、最も強い細胞増殖阻害活性 を示すアンタゴニスト的化合物であることを見出した。 一方、単純な構造を有するビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン誘導体はエストロゲン受容体に対して弱い親和性を有する。適切な疎水性構造を付与することにより、その活性を著しく向上させることができると仮定した。3,3-ジメチル基を有する化合物はERへの結合親和性はestradiolに近い活性を示した。一方、4,4-ジメチル基を有する化合物ではその活性は著しく低下した。これらの化合物はMCF-7細胞を用いた細胞増殖試験では、アゴニスト作用を示すが、高濃度で弱いアンタゴニスト作用を示すパーシャルアゴニストであることを見出した。 当教室で開発した受容体制御化合物の神経系疾患制御に関する2つの重要な展開があった。選択的エストロゲン受容体制御薬BE360を、抑うつ状態のモデルとして嗅球摘出(OBX)マウスを用い、短期記憶に対するY-maze法による行動薬理学的解析を行った。OBXにより障害された短期記憶は、BE360の100microg/dayの投与により有意に改善した。神経新生数も有意に増加し、一方でBE360は生殖器官には影響を及ぼさないことも判明した。 また、RXRアンタゴニストを神経細胞での保護作用の機構研究に用いた。Bexarotenは白血病治療薬として知られているが、虚血発作時の神経保護作用があり、RXRアンタゴニストとしても知られている。この作用の機構を解明することを目的として研究を行い、RXRアンタゴニストBR1211がその効果を効果的に阻害することを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
疎水性構造の変換によるエストロゲン受容体のアゴニスト/アンタゴニストバランスの変化を系統的に解析するための化合物の合成と評価は順調である。本年度は、当教室で開発した受容体制御化合物を神経系疾患に応用するための2つの重要な展開があった。選択的エストロゲン受容体制御薬BE360の行動薬理学的解析による短期記憶の改善、神経新生数の増加が見出され、また、RXRアンタゴニストBR1211が神経保護作用を有することを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
新規に設計合成したエストロゲン受容体パーシャルアゴニスト、選択的エストロゲン受容体制御薬の既存の抗がん薬、骨祖しょう症薬としての展開のみならず、これまで実現されていない神経系への作用を目的とする選択的エストロゲン受容体制御薬を目指した基盤をつくることを目標としたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
細胞活性試験の一部、細胞培養による試験を翌年度に延期したため、その実験用培地、試薬、器具などの購入を延期したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
翌年度に必要機材を購入し、使用する。
|