研究実績の概要 |
昨年度までに直鎖状N-メチルアミドオリゴマーについての構造に関する知見を得たことを踏まえ、今年度はそれを用いた大環状オリゴアミドの構造特性に関する知見を得ることができた。また一方で、酸性度を変化させた場合のフォールディングの知見から、N,N-ジアリール型アミド構造へと発展させ、ピリジン環が有効にスイッチトリガーとして働くことが認められた。 大環状アミドについては、単量体からの一斉合成において、これまでの3~5量体程度のものだけでなく、10量体を超える大きな大環状化合物を得ることができた。結晶構造解析による構造の解明は4量体まで達成されたが、計算化学的な手法により6量体等にも特徴的な大環状構造を認めることができ、新規な包接化合物群としての可能性を見出すことができた。 N,N-ジアリール型芳香族アミドの立体化学では、立体反発的な要因よりもN-芳香環における電子密度差によって構造を制御できるということをこれまで見出している。このN,N-ジアリール型分子スイッチにN-ピリジルアミドを組み込むことによって、周囲のpH変化という動的要因に対して構造変換を生じることができるようになった。即ち、本来電子不足のピリジン環であるが、もう一つの芳香環としてπ電子不足のベンゼン環を導入することでピリジン環との相対値が拮抗し、その結果ピリジン環へのプロトン化によって電子状態を相対的に逆転させることが可能となる。このようなN,N-ジアリール型アミドの創製によって、周辺の酸性度に応答する構造単位を創り出すことに成功した。
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