研究実績の概要 |
27年度に合成したカルボニル基とシアノ基の二つの電子吸引基をもつ目的のエノン化合物はビタミンD受容体(VDR)のアゴニストであった。そこで、当該化合物が共有結合を形成するかESI-MSを用いて検討した。その結果、apoVDRのピークよりリガンドの分子量分シフトしたピークは観察されず、共有結合形成を確認することはできなかった。続いて当該化合物とVDRの共結晶化を試みたところ、共結晶が得られた。X線結晶構造解析の結果、当該化合物はVDRのHis393、His301と共有結合しておらず、24位のカルボニル基がHis393と水素結合していることが示された。共有結合形成のための反応点とHis393の距離が長すぎた(遠すぎた)ためと考えられる。本研究の結果に基づいて、今後は反応点を近づけるために、25,26位に二重結合をもち、26位にカルボン酸と電子吸引基をもつ化合物が共有結合形成できるかもしれないと考えている。本研究と関連する非可逆的共有結合型リガンド(ESI-MSで共有結合形成は確認済み)の結晶構造解析も行い、詳細な結合様式が明らかになった。興味深いことにVDR中に共有結合型と非共有結合型が混在していた。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は以下の通りである。①a位に2つ目の電子吸引基をもつエノンを側鎖に備えたリトコール酸誘導体を合成した。②a位に2つ目の電子吸引基をもつエノンを側鎖に備えた活性型ビタミンD誘導体を合成し、VDRのアゴニストであることを明らかにした。③合成した活性型ビタミンD誘導体とVDRの共有結合は確認できなかった。④合成した活性型ビタミンD誘導体とVDRの共結晶構造解析を行った。⑤非可逆的共有結合型リガンドの共結晶構造解析も行った。
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