研究課題/領域番号 |
26460156
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
青木 伸 東京理科大学, 薬学部, 教授 (00222472)
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研究分担者 |
安部 良 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 教授 (20159453)
西道 隆臣 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, その他 (80205690)
小野 公二 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90122407)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ホウ素 / キャリア / ホウ素中性子捕捉療法 / グルコース |
研究実績の概要 |
BNCTの最大の課題の一つは、がん組織へ選択的に集積する含ホウ素薬剤の開発である。そこで本研究は、BNCTに有効な含ホウ素薬剤と、ホウ素NMR(MRI)によるホウ素化合物のin vivo イメージング法の開発目的とする。 平成27年度は、癌細胞での過剰発現が報告されているグルコーストランスポーターを標的とした糖誘導体を母骨格とする新規ホウ素キャリアーの設計と合成を行った。D-glucosamine 誘導体から数工程でデザインした化合物の合成を行うことに成功した。次に、それらの化合物のHeLa-S3、A549細胞に対する細胞毒性と細胞導入率、WST-assay、ICP-AES・ICP-MSを用いて測定した。その結果、どの化合物も低毒性であることが示されたが、細胞への取り込みは認められなかった。次に、腫瘍マウスを用いて腫瘍への移行性と体内分布をICP-MSを用いて測定した。その結果、ある化合物が、絶対値は低いものの高い腫瘍への移行性(T/B比2.3~2.4)を有することが示唆された。 一方、o-カルボランを有する化合物が、中性pH水溶液中でCu(II)イオンによって分解され、10モルのホウ酸が生成することを見出し、その推定反応機構を解析した。そして、その反応を11B MRIプローブへ応用して論文発表した(Eur. J. Inorg. Chem. 2016)。この分解反応には50 oCという高温が必要であったが、o-カルボランにCu(II)に対する配位子を結合させると、室温数時間で分解することを見出し、より迅速なCu(II)検出が可能になった。この成果について、同じ学術雑誌上で発表した(Eur. J. Inorg. Chem. 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度合成を計画していた化合物の殆どは、その合成をほぼ達成し、細胞内への取り込みの測定も行った。特にD-glucosamine 誘導体から数工程で合成した化合物のHeLa-S3、A549細胞に対する細胞毒性と細胞導入率、WST-assay、ICP-AES・ICP-MSを用いて測定し、低毒性であることが示されたが、細胞への取り込みは認められなかった。腫瘍マウスを用いて腫瘍への移行性と体内分布を測定した結果、ある化合物が、高い腫瘍への移行選択性(T/B比2.3~2.4)を有することが示唆された。京都大学原子炉実験所の原子炉の休止状態が長く続いている事情があり、実際に細胞を用いた中性子照射実験を平成28年度以降に行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
上記「研究実績の概要」項で述べたホウ素官能基やホウ素クラスターを導入したグルコース型化合物を数多く合成し、それらの細胞導入率を測定する。できれば中性子照射実験を行いたい。前年度までに確立した11B MRI (Magnetic Resonance Imaging)によって、細胞内移行や、担がんモデルマウスなどの小動物における体内分布を観測する。さらに、その知見をもとに、実際にホウ素薬剤を導入したモデル動物に中性子を照射し、BNCTにおける有用性を確認する。Cu(II)イオンの11B MRIプローブについては、細胞内導入を改善するための分子設計と合成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品のうち、購入する必要がなくなったものがあるため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に使用する消耗品にあてる予定である。
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