毎年秋冬に周期的に発生するインフルエンザのうち最も恐れられているのは、強毒化した新型鳥インフルエンザウィルスであるが、この感染症を制御するにはワクチンに加えて抗インフルエンザウィルス薬の開発が重要となる。これまでに抗インフルエンザウィルス薬として臨床上で使用されてきたアマンタジンやタミフルにも、既に抵抗性を示すウィルスの出現が広範に認められている。このような状況の下、新たな創薬ターゲットを基盤とした薬剤の開発が求められている。 本研究では、インフルエンザウィルスの宿主細胞への感染に関与するヘマグルチニン(HA)を阻害することでウィルスの増殖を抑制できることに着目して、HAと宿主細胞との結合阻害剤が新規抗インフルエンザウィルス薬として期待できるものと考え、フラン誘導体であるムメフラールのHAにおける阻害作用発現機序の解明とその構造活性相関研究を通してリード化合物の開発を目指すものである。 本年度は、既に確立したクエン酸からのMFの合成法における鍵中間体を利用して数多くのMF誘導体を調製した。また、MFは不斉中心を有することから光学活性なリンゴ酸から両鏡像体の合成にも成功した。これら合成したMF及びその誘導体の上記 A/Narita/1/2009株に対する阻害活性を検討した結果、ヒドロキシジカルボン酸単位が活性発現に必須であること、エステル部のフルフラール単位は代替が可能であり、アダマンチルメチルに置き換えることで約10倍の活性の向上が見られた。
|