研究課題/領域番号 |
26460159
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柿澤 多惠子 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (60445963)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 創薬科学 |
研究実績の概要 |
研究代表者の所属するグループでは、これまで trans-2-phenylcyclopropylamine(PCPA)を含む、ヒストン脱メチル化酵素 lysine-specific demethylase 1(LSD1)の阻害剤の合成を行ってきた。これまでの研究では、LSD1 の基質に相当する 21 残基のヒストン H3 の配列(ARTKQTARKSTGGKAPRKQLA)に基づいた創薬研究を行ってきた。本研究では、薬剤の実用化に向けた基質配列の長さの検討を今年度の研究目標とした。 LSD1 から脱メチル化を受ける4番目のリシン残基(Lys-4)の側鎖に PCPA 部位を含む 21 残基のヒストンH3の配列のうち、C 末端側から 4 残基ずつアミノ酸残基を減らした阻害剤をそれぞれ合成した。阻害剤の基質配列部分は一般的なペプチド固相合成法で合成し、Lys-4 部位の PCPA による修飾は、固相上および液相での有機合成を組み合わせて行った。活性の評価は、基質であるメチル化リシンが脱メチル化された時に生じる過酸化水素を検出する酵素アッセイ系で行った。その結果、阻害剤の配列を短くするに従い、徐々に LSD1 阻害活性の低下が見られた。21 残基の配列では IC50 = 0.148 μM であったのに対し、17~9 残基に短くした配列の IC50 は、0.158 μM~0.443 μM 程度の阻害活性を維持することが分かった。一方、更に配列を短くした5残基の阻害剤では、IC50 = >10 μM と、活性の著しい低下が見られた。上記の結果を含む研究成果を国内の学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の段階で、初年度は LSD1 阻害剤の基質配列の長さの調整と活性評価を今年度の研究目標とした。21 残基のヒストンH3の配列に基づいた阻害剤の C 末端側から 4 残基ずつアミノ酸残基を減らした阻害剤をそれぞれ合成し、活性の評価を行うことができた。また、得られたデータを国内の学会で発表することができたため、目標は概ね達成出来たと言える。 また、研究計画の段階で2年目以降に計画していた Lys-4 部位の構造活性相関研究にも着手できたため、研究計画全体から見ても概ね順調に研究が進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の段階で、2年目以降に計画していた細胞活性向上のための研究や、Lys-4 部分の構造活性相関研究を試みる。細胞活性向上のための研究としては、細胞内への薬剤の取込みの改善を試みる。すなわち、ヒストンのような細胞内のタンパク質に作用する酵素をターゲットとした薬剤合成では、細胞内への薬剤の取込みが活性向上に重要な役割を果たすと予想されるため、改善を検討する。また酵素レベルでの活性の向上に向け、阻害剤の Lys-4 の部位に PCPA 以外の部位の導入した構造活性相関研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の初年度の目標が予想よりも速やかに達成できたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画の段階で 2年目以降に計画していた構造活性相関研究などに使用する予定である。
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