研究実績の概要 |
研究代表者は、ヒストン脱メチル化酵素 lysine-specific demethylase 1(LSD1)の基質に相当するヒストン H3 の配列に基づいた創薬研究を行ってきた。これまでの研究では、21 残基のヒストン H3 の配列(ARTKQTARKSTGGKAPRKQLA)のうち、LSD1 から脱メチル化を受ける4番目のリシン残基(Lys-4)の側鎖に阻害活性を持つことが予想される trans-2-phenylcyclopropylamine(PCPA)などを導入してきた。本研究では、PCPA 以外に阻害剤活性を持つ構造の探索を行った。 阻害剤のヒストン H3 の配列部分は一般的なペプチド固相合成法で合成し、Lys-4 部位の修飾は固相上および液相での有機合成により行った。Lys-4 部位に対し、新たに 2,5-dihydro-1H-pyrrole(DHP)および 1,2,3,6-tetrahydropyridine(THP)を用いて誘導した阻害剤を合成した。酵素アッセイにより LSD1 への阻害活性評価を行ったところ、PCPA を導入した阻害剤の IC50 が 0.148 μM であったのに対し、DHP および THP を導入した化合物はそれぞれ IC50 = 0.223 μM および 11.0 μM であった。また、LSD1 から脱メチル化を受けるとされる 9 番目のリシン残基(Lys-9)の側鎖部分に対しても PCPA、DHP および THP を導入した化合物を合成した。阻害活性評価の結果、Lys-9 部位を修飾した阻害剤は、それぞれ対応する Lys-4 の阻害剤よりも低い活性を示した。上記の結果を含む研究成果をまとめて雑誌論文に発表した。
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