研究実績の概要 |
我々自身で創出したシード化合物HUHS015をシード化合物とし、構造展開を行ってきた。その結果、幾つかの化合物でin vitro酵素阻害活性およびDU145細胞増殖抑制活性が、HUHS015より10倍程度強い化合物を複数のシリーズ誘導体で見出すことに成功した。また、創薬を目指し、基礎的な体内動態も満足できる化合物を得ることを目標にし、ラットを用いた経口吸収性の検討を行った。その結果、代謝的に不安定な構造部位を持つ誘導体が、同程度の疎水性を有する化合物に比べ明らかに低い吸収性を示したため、in vitroにおけるS9mix(肝臓の代謝酵素の集合体)存在下における安定性を検討した。その結果、推定どおり、特徴的に経口吸収性を示す化合物はすべて、S9mixにより容易に代謝・分解されることが明らかとなった。そのため、代謝安定性を考慮したデザインに注力し、吸収性においてもHUHS015より10倍程度強い化合物をいくつかの誘導体で見出した。そして、これらの化合物についてxenograftモデルを行った結果、10 mg/kgの経口投与において、ホルモン非依存性前立腺がん治療の第一選択薬ドセタキセルとの併用(2.5 mg/kg, sc, once/week)で夫々の単剤投与に比べ、併用群において有意差付きで抑制効果を示した。また、このとき体重、肝臓、腎臓重量にも変化無く、GOP・GPT・BUN・creatinineなどの血液パラメータにも異常が認められず、臨床薬との顕著な併用効果を示し、毒性が無い新規前立腺がん治療剤を創製する目標をほぼ達成することが出来た。今後、さらに最適化を進め、企業との連携を目指す計画である。
|