研究課題/領域番号 |
26460166
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
大坪 忠宗 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (30365879)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー / 蛍光 / 組織染色 / イメージング / 酵素活性 / 可視化 |
研究実績の概要 |
脳内グルコシダーゼ活性イメージングを目的として、グルコースのアグリコンに2-ベンゾチアゾリルフェニル(-C6H3(2-benzothiaolyl)-4-Br, BTP3)基を導入した誘導体を合成した。この誘導体は、アスペルギルスやアーモンド由来の酵素に対して、異なる反応性を示すことが明らかとなったが、哺乳類由来のβ-グルコシダーゼの基質にはならないことも合わせて明らかとなった。そのため、酵素活性中心付近の立体反発を緩和するため、グルコースと発色団の間に4-ヒドロキシベンジル基を挿入した誘導体(Glc(1b)-C6H4-CH2-O-BTP3)を合成した。 基質の合成は以下の様に行った。即ち、水酸基をアセチル基で保護したグルコースの1位アセトキシ基を臭素に置換後、酸化銀存在下4-ヒドロキシベンズアルデヒドとカップリングしてβ誘導体を合成した。ホルミル基を水素化ホウ素ナトリウムで還元後、水酸基をメシル化し、臭化リチウムで臭素化してベンジルブロミド誘導体へ変換した。さらに、水素化ナトリウム存在下、HO-BTP3とカップリング後、アセチル基を除去して目的とする基質を合成した。 新規基質は、哺乳類由来のβ-グルコシダーゼ(GBA1)量依存的に蛍光強度が増大したことから、良好なGBA1の基質であると判断した。また、発色団としてのHO-BTP3は、酸性領域(pH5.18)においてもラット脳の薄膜組織を用いた脳内β-グルコシダーゼ活性のイメージングに適用可能であることを明らかとした。 以上より、酵素を識別する能力を有する初期の誘導体に一部修正を加えることで、比較的適用範囲の広い蛍光組織染色可能なβ-グルコシダーゼ基質を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期型のグルコースに2-ベンゾチアゾリルフェニル(-C6H3(2-benzothiaolyl)-4-Br, BTP3)基を直接導入した誘導体群は、予想より個性的な反応性を示した。(例えば、ベンゾチアゾール環上の塩素原子の有無で、アスペルギルスとアーモンド由来のβ-グルコシダーゼに対する反応性が逆転した。)特に、哺乳類由来のβ-グルコシダーゼに対して全く反応しない点は、予想される範囲内であったとはいえ、最悪の事態であった。しかし、古典的な手法であるとはいえグルコースとアグリコンとの間にスペーサーを組み込むことで反応性を改善し、哺乳類由来β-グルコシダーゼ(GBA1)の基質に改善することができた。
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今後の研究の推進方策 |
新規に合成した基質は、芳香環ユニット組み込みに伴い、全体的に脂溶性が向上すると同時に長くなったため、水溶性低下が著しい。そのため初期の基質と同じ条件(溶媒に含まれるDMSO濃度)では、酵素と全く反応せず、当初は基質として不適切と判断していた。 現在、DMSOの濃度は生化学的なアッセイにおける限界に近いため、水溶性の改善は緊急の課題である。従って、HO-BTP3の臭素原子を除去、他のハロゲン(フッ素、塩素)に置き換える、水溶性を改善できる置換基(例えば、モルホリン)に置換した誘導体を合成し、酵素基質としての可否、および実用的な溶解度と蛍光組織染色能の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンピューターのOSアップデートに伴い、周辺アプリケーション(NMR解析ソフト、構造式描画ソフト、書類作成ソフト)などが使用できなくなりつつあり、こうしたハード・ソフトウェアのアップデートが不可欠になってきている。さらに、著作権問題の回避・知的財産保護等の観点からも、こうしたインフラ整備は不可避である。(未だWindowsXP機が稼動している現状は、セキュリティの側面からも改善されるべきものである。) パソコン本体と比較して、ソフトウェアは数倍高価であるものが多く、こうした予算を確保するために次年度への繰越を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
NMR解析ソフト、構造式描画ソフト、文書作成ソフトの購入。複数で共有するNMR解析PC(ソフトウェアの著作権問題回避のため)と、知的財産等の機密情報を保存するパソコンを分離するためにパソコンの新規購入を行う。
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