最終年度は、まず非GMP環境下におけるヒトリンパ球様細胞のクローン樹立条件をGMP環境下に合うように改善を試みた。GMPでは非GMPにはない除染工程があるため、リンパ球を回収する操作や手順を見直すことによって回収時間を短縮し、生細胞の回収率を従来の2倍まで改善した。また回収したヒトリンパ球を発癌促進物質PMAで処理することによって、長期培養可能なBリンパ球を5クローン取得することができた。今後、最適なクローンを選択し、マスターセルバンクを作製する。 Bリンパ球でのタンパク質生産用の発現ベクターのMYEOV2プロモーターを活性化するために培地中にIFN-gammaを添加したが、ヒト骨髄腫由来細胞株SC-01MFPではIFN-betaと同様に蛍光タンパク質ZsGreenの生産性は上がらなかった。また、もう一つのプロモーターとしてCD74プロモーターをクローニングし、同様にSC-01MFPでのZsGreenの生産性を調べたが、従来のCMVプロモーターのタンパク質生産性には至らなかった。一方で、SC-01MFPを血清培養から無血清培養に変えただけで、ZsGreenの生産性は1.5倍までに増加した。 これまでの結果から、非GMPと同様にGMP環境下でもヒト末梢血リンパ球から長期培養可能なBリンパ球クローンを得ることができることが明らかとなった。従って、主に分泌タンパク質の生産に有効であると考えられるが、Bリンパ球で医療用タンパク質を生産するための発現ベクターの開発はまだ検討の余地があった。
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