研究課題/領域番号 |
26460168
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
渡辺 匠 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 有機合成研究部, 部長 (80270544)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 触媒的不斉合成 / ケミカルバイオロジー / XDR-TB / 抗結核薬 / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
caprazamycinをリードとした半合成誘導体であるCPZEN-45は超多剤耐性結核菌(XDR-TB)に対しても優れた抗菌活性を示すこともあり,現在,前臨床研究が順調に進捗している.また,CPZEN-45は細胞壁合成関連酵素の一つであるWecAの阻害により抗XDR-TBを発現することが明らかになっている.本研究もCPZEN-45のWecA阻害活性に必須な構造要件を明確にし,より合成容易でCPZEN-45と同等もしくはそれ以上の生物活性を有し,かつ経口投与可能な新規類縁体の創生を目標とし,方向性の再考した.平成27年度は天然物そのものを出発原料とする半合成アプローチでは入手困難な類縁体の入手を可能とすべく,まずはCPZEN-45の触媒的不斉全合成ルートを確立した. caprazamycinのコア構造であり,それ自体天然物でもあるcaprazolに関し,代表者はすでに触媒的不斉全合成を達成し論文発表も行っているが,その中で,本化合物に特徴的なジアゼパノン環とウリジン部位の接合部のβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸構造の立体制御にはイソシアノ酢酸アルドール反応を用いていたが,ジアステレオ選択性が約4:1に留まっていた.本年は代表者が所属する研究室で開発されたZn-Linked-BINOLを触媒としたアルドール反応の条件をグリシンシッフ塩基に対して適用し,ウリジン由来のアルデヒドと反応を行ったところ,完全なsyn-選択性,およびsyn-体におけるやはり完全なジアステレオ選択性(アルデヒドに関する面選択性)を達成した.また,ジアゼピノン骨格についてはアミドとヨウ化オレフィンとのBuchwald型のカップリングを用いることで収率よく構築することが可能であった.その後,CPZEN-45の触媒的不斉全合成を完成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CPZEN-45の抗結核薬候補化合物としての有用性,特に超多剤耐性株に奏効すること,ならびにこれまでの臨床薬の作用メカニズムに含まれていないWecA阻害活性を示すことに注目し,本化合物の高次の構造活性相関(SAR)研究によりフォーカスした内容とした.半合成的手法では入手困難なCPZEN-45関連化合物の迅速合成に寄与すべく急遽,その触媒的不斉全合成法の開発に着手したが,所属研究室で開発された触媒的不斉反応およびクロスカップリング的方法論を応用した効率的ルートを1年間で確立することが出来た.大量合成に不適な工程も含まれず,今後のSAR研究の進展が期待される.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立したCPZEN-45の触媒的不斉全合成ルートを活用し,ジアゼピノン骨格内の二重結合,およびアミノリボース部位の各官能基の必要性を探ったのち,必須な部分構造を適切に配することが可能で,なおかつ合成容易なテンプレート構造への置き換えを検討する.その後,アニリド側鎖の再最適化を行いつつ,感染モデルを用いた経口吸収性の検討を並行し,新規抗XDR-TBリードの提示を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りの支出であったが、26年度にも繰越金があり、残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究機関からの予算で購入予定の消耗品に充当する。
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