27年度までにカプラゾールの触媒的不斉全合成を達成し,またこれに基づきカプラザマイシンBの合成にも成功している.更に,カプラゾール全合成においてウリジン部位と7員環ラクタム部位の間の結合形成に用いていたイソシアノ酢酸アルドールに代わり,所属先の研究室で開発されたlinked-BINOLを用いることでジアステレオ選択性が大幅に改善することを見出し,これを利用したXDR-TBにも有効なカプラザマイシンの半合成誘導体CPZEN-45の触媒的不斉全合成も達成した.今年度はカプラザマイシン誘導体の合成研究,主として立体異性体の合成を試みた. CPZEN-45はカプラザマイシンの脂肪族側鎖部位の構造を大幅に簡略化し,また7員環部位も二重結合の入ったジアゼピノン環であり,全合成的に生物活性物質を供給することを考えた場合,親化合物と比較しハードルが低い.官能基変換と比較し立体化学の変更は全体的な置換基の配置を大幅に変えないことから,物理化学的性質を一定程度維持しながら標的化合物との相互作用様式を調整することが可能となる.類似構造をもつカプラゾールについてはジアゼパノン環内の立体異性体は構造決定研究に付随し報告があることから,今回はアミノリボースとのグリコシル結合に関するエピマーの合成を試みた.各種糖供与体やプロモーター、およびアミノリボースの水酸基保護基についてスクリーニングを行ったが,エピマーを種生成物とする条件を見出すには至っていない.等量混合物で得られる系はあるので,まずはこれにより得られた異性体の生物活性を検討する.
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