研究課題
医療用医薬品として用いられる抗不整脈薬「アミオダロン」は、病院排水を介して排出され、水生生物に高い毒性影響を与える可能性があるとされる。アミオダロンを水槽中からオタマジャクシに曝露させたところ、オタマジャクシからカエル成体への自然変態、尾部短縮、および後肢伸長の抑制が観察された。カエルへの発達は内在性の甲状腺ホルモンが寄与していると言われていることから、アミオダロンによる自然変態、尾部短縮、および後肢伸長の抑制は、甲状腺ホルモン系を阻害したことによるものと考えられた。実際、アミオダロンは甲状腺ホルモン受容体を介した活性を阻害したこと、さらにはオタマジャクシ肝臓中のアミオダロン濃度が水槽中曝露濃度に比べ非常に高い濃度で蓄積していたことがその要因と考えられた。アミオダロンの肝臓中の蓄積は、カエル成体に比べオタマジャクシが高い結果であったが、これはアミオダロンの解毒に関わる薬物代謝酵素の発達変化が原因のひとつとして考えられた。オタマジャクシからカエル成体にかけて肝臓中に発現するチトクロームP450(CYP)の中には発現量が異なるものが観察された。この発現変動には甲状腺ホルモンが制御している可能性もある。カエル由来の細胞を用いたin vitro実験から、CYP1Aが甲状腺ホルモン依存的に発現が増加する可能性が示唆された。アミオダロン曝露によるCYP発現変動を評価したin vivo研究と合わせて考えると、アミオダロンの抗甲状腺ホルモン作用によりその発現量が低下し、アミオダロンの代謝が間接的に阻害された結果、肝臓中に高い蓄積性を示した可能性がある。ヒトでは新生児期に甲状腺ホルモン濃度が上昇することが知られている。カエルを用いた評価は水環境毒性の評価にとどまらず、ヒト新生児期の化学物質毒性影響評価にもつながる可能性もある。
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薬学雑誌
巻: 137 ページ: 247-248
10.1248/yakushi.16-00230-F