研究課題
本研究は、緑膿菌薬剤排出システムの排出口由来の部分ペプチドを合成し、アルパカに免疫して抗ペプチドVHH抗体クローンを取得して緑膿菌の菌体表面への結合、抗菌薬との相互作用の有無を調べることを目的としている。平成26年度の研究で、緑膿菌薬剤排出システム排出口(OprM)由来Loop1および2ペプチドに対するVHH抗体(4P94および4P41)を取得することに成功し、これらが緑膿菌細胞表面に出ている排出口ループ部分に特異的に結合することを緑膿菌のWhole Cell ELISA法によって確認した。4P41VHH-3量体(抗体A=3個をリンカーを介して直列につなぐ、抗体B=抗体C末のZinc Fingerを介して3個束ねる)遺伝子デザインし、大腸菌に発現させた可溶性画分からHisTrapカラムを用いて部分精製した。PBS中の緑膿菌(PAO-1, PA04790, nalB, NCGM2.S1株)と部分精製抗体を混合して、37℃、1時間加温後にLBプレートに菌を播くコロニーアッセイを行った。コントロールバッファー、単量体VHH抗体、コントロールVHH抗体-4量体では、抗菌活性を示さなかったが、4P41VHH-3量体(抗体A、B)を加えると顕著な抗菌活性が観察されている。
2: おおむね順調に進展している
緑膿菌排出システム排出口(OprM)由来Loopペプチドに対して作製したアルパカ一本鎖抗体は、緑膿菌を用いたWhole Cell ELISAによって結合が確認された。この一本鎖抗体単量体はOprMの高発現株であるnalB株に対して、通常株PA04790株より多く結合することから、緑膿菌外膜表面上のOprMに結合している可能性が高いと思われた。本抗体の3量体を作製した。PBS中で本抗体3量体と混ぜて37℃、1時間のインキュベーション後に一部をアガープレートに播いてコロニーの出現をコントロールバッファー、抗体単量体、コントロール抗体4量体に比べて、非常に顕著のコロニー数の減少を観察しており、抗体自体に何らかの抗菌活性があるかも知れないと思われる。
大腸菌で発現させ、HisTrapカラムで精製したVHH抗体3量体が未だ十分に精製出来ていないため、明確な結合が得られない状況となっている。平成27年度は、HisTrapカラムと陽イオン交換カラムを組み合わせて、より精製した抗体サンプルを用いて再現性を見る。本抗体の緑膿菌排出システム排出口由来ペプチドへの結合力(親和性が数100nM)が弱いため、可変領域に人工的変異をかけて、高親和性抗体を再度選択する実験を行いたい。
予定していた免疫実験(業者委託)について、抗原調製が間に合わず、次年度に繰り越した。
本年度、上記実験費用に使用する予定。
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Fundamental Toxicological Science
巻: 2 ページ: 19-23
http://pharm.thu.ac.jp/research/grant.html