研究課題/領域番号 |
26460177
|
研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
川原 正博 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (40224828)
|
研究分担者 |
水野 大 武蔵野大学, 薬学研究所, 講師 (70380061)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | carnosine / ER stress / Zn / amyloid / anserine / HPLC / dementia / Alzheimer |
研究実績の概要 |
本研究では、カルノシンの脳血管性認知症予防効果を明らかにするために、カルノシンによる神経細胞保護メカニズムを解明することを目的として実験を行った。 本年度は、カルノシンが亜鉛による神経細胞死に対してどのようなメカニズムで保護効果を持つかについて、より詳細な検討を行った。申請者等は、亜鉛が不死化視床下部神経細胞(GT1-7細胞)に対して顕著な神経細胞死を引き起こすことを見いだしており、これまでに亜鉛投与によってZnT-1(Znトランスポーター1)、MT-1(メタロチオネイン1)などの金属誘導遺伝子の発現が増加することを見いだしている。カルノシンは、亜鉛などの金属結合能を持つために、キレート効果によって亜鉛の細胞内流入を抑制しているかどうかについて、細胞内Zn定量試薬によって検討した結果、細胞内Zn量には変動は無く、ZnT-1やMT-1の発現にも変化が無いことが判明した。一方、カルノシンやその誘導体であるアンセリンの投与によって、GADD34などの小胞体ストレス関連遺伝子やArcの遺伝子発現が抑制され、Western blotting法によるタンパク発現も抑制されていることが判明した。これらの結果から、カルノシンは、細胞内Zn流入を抑制するのでは無く、小胞体ストレス経路に作用して神経細胞を保護していることが示唆された。 また、カルノシン類の脳内や食品中における定量解析を行うために、Hypercarbカラムを用いるHPLCによる簡便な大量系を開発した。この結果、カルノシンは脳内、特に嗅球内に多く含まれ、発達過程で増加することが判明した。さらに、ウナギ、ウシ、ウマなどの食肉中のカルノシン及びアンセリン量の解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目であるが、当初の予定であった亜鉛神経細胞死の保護活性メカニズムについては、おおむね順調な結果が出ている。また、カルノシンの定量についての分析系も確立することが出来た。細胞内Zn定量については、今回購入した蛍光顕微鏡を用いて系を確立しているところである。結果として、英文論文3報、和文総説3報、招待講演4、国際・国内学会発表3回と充分な研究成果を公表することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、亜鉛だけで無く、銅やその他の金属との相互作用について興味深い結果を得ており、様々な薬物実験を行う予定である。さらに、昨年度購入した顕微鏡を用いる形態観察システムを立ち上げて、より詳細な検討を行い予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
試薬を発注していたが国内在庫が無く、輸入になったため3月末日納品には間に合わなかったため(なお、該当試薬は4月に納入された)
|
次年度使用額の使用計画 |
実験自体は予定を変更して現在遂行中
|