長崎県佐世保市において2016年3月から2017年2月までの1年間にわたり、ハイボリウムエアサンプラーを用いて大気粉塵を捕集し、大気粉塵中のエンドトキシンおよびタンパク質を測定した。大気粉塵は、平成26年度と平成27年度の福岡県太宰府市にける調査の結果、高濃度のエンドトキシンが検出された9月から11月と高濃度の黄砂が飛散することの多い3月から5月については、ほぼ毎日捕集し、それ以外の月は原則として各月の第2週目に5日間分ずつ捕集した。その結果、大気中のエンドトキシン濃度は5、9、10月に高く、特に9月と10月に高濃度の日が多数みられた。また、各大気粉塵について黄砂の指標であるCa2+濃度を測定した結果、5月に高濃度のCa2+が検出され、黄砂が飛散したと考えられた日に高濃度のエンドトキシンが検出されたことから、エンドトキシン濃度の上昇に黄砂の飛散が関与した可能性が高いと考えられた。一方、タンパク質はエンドトキシンとは異なり、日間変動はみられるものの濃度変化は小さく、特に高濃度の日が多い月は見られなかった。アレルギー性鼻炎の原因となる花粉由来のタンパク質が多く飛散したと予想される3月から5月に捕集した大気粉塵についてポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ったが、顕著なタンパク質によるバンドは検出されなかった。TNF-α遺伝子プロモーター領域の発現を検出するヒト細胞試験系を用い、大気粉塵抽出物の活性を試験した結果、エンドトキシン濃度の高い抽出物にTNF-αプロモーター活性が検出された。今後、秋季におけるエンドトキシン濃度の上昇のヒト健康への影響について検討する必要があると考えられた。
|