研究課題/領域番号 |
26460180
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
津川 尚子 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (30207352)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ビタミンK / UBIAD1 / 血管特異的遺伝子欠損 / 血管平滑筋 / 血管石灰化 |
研究実績の概要 |
ビタミンKには側鎖構造の異なる類縁体が存在する。このうち、食事から摂取されるビタミンKの大部分はビタミンK1(PK)とメナキノン-7(MK-7)であるが、ビタミンKの標的組織である肝臓や骨、血管、脳、膵臓にはビタミンK2(MK-4)が高濃度に蓄積されている。これまで、PKやMK-7をMK-4へ体内変換する酵素UBIAD1を同定したが、さらに体内変換の生理的意義を明らかにすることが必要である。ビタミンKは、γ-glutamylcarboxylase (GGCX)の補因子として働き、ビタミンK依存性タンパク質(VKDP)のグルタミン酸残基γ位をカルボキシル化(Gla化)することで血液凝固や骨形成・骨質維持作用を発揮する。また、VKDPの一種であるMGPの遺伝子欠損マウスは、生後数週間で重篤な血管石灰化を発症して死亡する。これは、MGPが強力な血管石灰化抑制因子であることを示すと同時に、血管におけるビタミンKの重要性を強く示唆する。MGPは、Gla化されることによって骨芽細胞分化誘導因子である骨形成タンパク質BMP-2の作用を阻害する。本研究では、ビタミンK体内変換酵素UBIAD1の働きについて「血管」に焦点を当て、血管特異的UBAD1遺伝子欠損の作出と血管でMK-4を喪失したマウスの表現型解析を行うことを計画した。血管特異的UBIAD1遺伝子欠損マウスは、まずUBIAD1 flox/floxマウスに、血管平滑筋に特異的に発現するTransgelin(SM22α)のプロモーターを用いてCreリコンビナーゼを発現するマウス(Transgelin(SM22α)-Cre)の交配により作出することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管平滑筋特異的UBIAD1欠損マウス作成を目的として、Transgelin(SM22α)-Creリコンビナーゼ発現マウスをUBIAD1 flox/flox マウスの交配を実施した。具体的には、Transgelin(SM22α)プロモーターで血管平滑筋に恒常的にCre リコンビナーゼを発現するB6.Cg-Tg(Tagln-cre)1Her/Jあるいは成熟マウスの血管平滑筋でCreリコンビナーゼを発現するB6.129S6-Taglntm2(cre)Yec/Jを交配させ、遺伝子型の確認により出生がメンデルの法則に従うかを検討中である。また、妊娠日数を追って胎仔の生育状況及び遺伝子型の解析についても同時進行させている。また、血管平滑筋特異的なUBIAD1 の欠失を確認するために、大動脈のUBIAD1 mRNA およびタンパク質発現の発現について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、血管平滑筋特異的UBIAD1欠損マウスの作成が進んでおり、これらについて出生状況、胎仔の生育状況の確認ができた段階で表現型の解析を進める。また、経口摂取したビタミンKが血管でMK-4へ変換しないことを確実に証明するため、MDやPK, MK-7の重水素ラベル体を投与し、重水素ラベルされたMK-4が検出されないことを確認する。表現型解析は、まず血管形成および血管石灰化観察、出血傾向やビタミンK代謝について検討する予定である。形態観察として、実験動物用X 線CT 装置を用いて、血管の形態異常の有無を大動脈や肺、腎臓を中心に3 次元的に観察し、また大動脈、肺のホールマウントおよび組織切片について石灰化の観察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由の一つは、研究実施にあたりすでに保有している試薬類を活用することができたことにある。また、交配後、個体を観察するための十分な出生数が未だ得られず、予定の検討までに十分に達していないことが理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の継続により、動物飼育費用と遺伝子解析費用が発生するため、まずはこれらに費用を充てる。さらに、形態観察用の試薬や切片作成、機器使用に対して支出を計画している。
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