研究課題
ビタミンKには側鎖構造の異なる類縁体が存在する。このうち、食事から摂取されるビタミンK1(PK)やメナキノン-7(MK-7)は、ビタミンK2(MK-4)へ体内変換され、肝臓や骨、血管、脳、膵臓にビタミンK2(MK-4)として高濃度に蓄積される。PK、MK-7をMK-4へ体内変換する酵素が、UBIAD1であることが同定されたが体内変換の生理的意義については明らかではない。ビタミンKはプロトロンビンやオステオカルシンをGla化することにより血液凝固や骨質維持作用を発揮する一方、血管ではマトリックスGlaプロテイン(MGP)のGla化を介して血管石灰化を抑制すると考えられている。本研究では、UBIAD1の血管における生理的意義解明に焦点を当て、血管特異的UBIAD1遺伝子欠損マウス(UBIAD1-V-KO)の作出を試みた。方法は、Transgelin(SM22α)-Creリコンビナーゼ発現マウスにUBIAD1 flox/flox マウスを交配させることによって行った。今回は、容易な出生が期待できる系統として、成熟マウスの血管平滑筋でCreリコンビナーゼを発現するB6.129S6-Taglntm2(cre)Yec/Jを用いた。その結果、UBIAD1-V-KOはメンデルの法則に従って出生し、離乳後しばらくは正常に生育した。しかし、雄マウスでは生後6週齢、雌マウスでは7~8週齢に胸腔内に胸水が貯留し死亡することを確認した。組織学的観察により、大動脈の弾性繊維に異常が見られ、心臓においては心臓壁の菲薄化が観察された。また、UBIAD1-V-KOでは血圧上昇と心拍数低下が観察され、血管平滑筋におけるビタミンK体内変換酵素の欠損が血管の形成や心機能に影響することを確認した。
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Biochem Biophys Res Commun.
巻: 483(1) ページ: 359-365
10.1016/j.bbrc.2016.12.139.