研究課題/領域番号 |
26460181
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
鹿志毛 信広 福岡大学, 薬学部, 教授 (80185751)
|
研究分担者 |
見明 史雄 福岡大学, 薬学部, 教授 (50248522)
佐藤 朝光 福岡大学, 薬学部, 助教 (90369025)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 抗炎症 / DNA / 乳酸菌 / 炎症性腸疾患 / ODN / Hsp90 / Hsp70 |
研究実績の概要 |
(1) THP-1 細胞に対するODNの抗炎症作用の評価 腸管における炎症には、上皮細胞だけでなく、免疫細胞も重要な役割を果たす。そこで、ヒトマクロファージ様細胞株THP-1にIBDの原因の一つとして知られるLPSを添加し、炎症の指標となるCOX-2およびiNOSの発現増加を測定することにより、免疫細胞におけるODNの抗炎症作用をODN7-F (TTTTGCCG)、ODN-7R (CGGCAAAA)およびODN-8F (TTGTCACC)を用いて評価した。その結果、7FのみがLPSによるCOX-2およびiNOSの両方の発現増加を抑制した。以上の結果、免疫細胞において7Fが強い抗炎症作用を持つことが分かった。
(2) ODN による抗炎症作用への TLR9、Hsp70、Hsp90、NF-κβ/Iκβ-αの関与の検討 RNAiによりTLR9の発現を抑制したCaco-2細胞では、7FのIL-8遊離抑制作用は完全には消失しなかった。そこで、TLR9以外の作用機構として、heat shock protein (Hsp)に着目した。Hsp90はDNAとの結合によりそのATPase活性が阻害されて、NF-κβの核内移行を抑制する作用を持つHsp70の発現を増加させることが知られている。そこで、7FとHspの関係について検討した結果、7FはHsp90に高い親和性を持ち、そのATPase活性を阻害することが分かった。また、7FはCaco-2細胞およびマウス大腸でHsp70の発現を増加させた。また、RNAiによりHsp70の発現を抑制したCaco-2細胞では、7FのIL-8遊離抑制作用が完全に消失した。以上の結果、7Fの抗炎症作用には、TLR9およびHsp90を介したHsp70の発現増加という2つの経路が関与することが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、乳酸菌のゲノム DNA から特定したODNの抗炎症作用の検討およびその作用機構の解明を行うことで、ODNを抗炎症薬として臨床応用へと展開するための基礎的な研究を行う事を目的としており、平成 26 年度においては、当初の計画通り、(1) THP-1細胞に対するODNの抗炎症作用および (2) ODN による抗炎症作用へのTLR9、Hsp70、Hsp90、NF-κβ/Iκβ-αの関与を検討した。その結果、研究実績の概要に記した一連の結果を得ることが出来たため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、in vivoにおけるODNの抗炎症効果を検証するために、「DSS誘発性大腸炎マウスに対するODNの予防・治療効果」について検討を行う。炎症の評価は、体重減少、下痢、血便、大腸の短縮、好中球遊走の指標であるミエロペルオキシダーゼ活性の増大、組織のHE染色を指標にして行い、更に大腸からmRNAを抽出し、リアルタイムPCRを用いて、炎症関連因子であるMIP-2 (ヒトIL-8のマウスホモログ)、COX-2、iNOSのmRNA発現量を測定し抗炎症効果を評価する。また、他のLactobacillus属やそれ以外の乳酸菌種においても、そのゲノムDNA上に存在する抗炎症性のODN配列を特定する。
|