研究課題
本研究で使用する肺炎球菌は慈恵医科大学より分与された。これらの菌は5%羊血液寒天培地で増やしたのち、常法によりホルマリン/PBSで不活化して、確認試験後に生物実験に利用した。本研究ではRSウイルス感染マウスモデルでの感染病態への肺炎球菌の影響をみるため、使用動物数をなるべく少なくする観点から、培養マクロファージ細胞であるRAW264.7細胞を用いてin vitroでの検討をまず実施した。RAW264.7細胞を懸濁した三種類の不活化肺炎球菌(SP-1, ATCC49619標準株; SP-2, JCSP16マクロライド耐性株; SP-3, JI2001-13莢膜型)と共に24時間培養した。その後、RSウイルス(MOI=1)を感染させて、さらに培養を継続した。培養上清中のTNF-alpha;量をELISAで測定したところ、3種類ともに添加量(に依存して産生増強効果が認められた。一方、RSウイルス非感染条件下では、SP-1と-2では高用量においてTNF-alpha;量の増加が見られた。そのため、SP-3を優先して感染動物実験を進めた。BALB/c♀マウス(6週齢)に麻酔下でSP-3を経鼻もしくは腹腔内投与した。5日後に麻酔下でRSウイルスを経鼻感染させた。感染5日後に麻酔下で肺胞洗浄液(BALF)、肺組織および血清を取得した。RSウイルス感染病態の代表的なマーカーであるBALF中のIFN-gamma;量は、SP-3の低用量投与から、経鼻および腹腔内投与において顕著に増加していた。さらに肺炎マーカーであるCCL-5量の増加も認められた。一方で、ウイルス非感染マウスでは、SP-3投与による両マーカーの検出はできなかった。これらの結果より、不活化肺炎球菌による刺激で、RSウイルス肺炎が増悪化していることが強く示唆された。現在、病理組織学的な検討を実施している。
2: おおむね順調に進展している
研究期間の前半は評価系の構築に注力することを計画していた。なぜなら、RSウイルス感染マウスモデルは構築済みであるが、肺炎球菌の重複感染や抗原の共存在下のRSウイルス実験モデルは報告されていないからである。そして肺炎球菌の刺激を入れるタイミングやエンドポイントを肺炎マーカーや病理組織学的な手法など様々な手法で明確にし、評価系を確立することが最優先事項に位置付けていた。26年度の結果より、評価系の確立にめどがついた。なお、当初の計画には入れていなかったが、動物愛護の観点からin vitro実験を先行して行い、肺炎球菌株を絞ったのちに感染動物実験を実施した。
今年度得られた不活化肺炎球菌によるRSウイルス肺炎の増悪化現象について、1. 肺炎球菌の刺激量、2. 同 刺激のタイミング、3. 同 株の相違などを精査して、最適な条件を決定することを第一とする。これらの条件を決定後、TBBPA曝露によるRSウイルス肺炎の増悪化に関する知見で得られている肺胞浸出液中のリンパ球組成の変化について比較検討を実施する。さらに肺組織の免疫染色による感染細胞の局在などを精査し、肺炎球菌による増悪化とTBBPAによるそれとの共通点と相違点を明確にする予定である。
残額(30655円)では希望試薬(44820円)が購入できなかったため、繰り越して次年度に購入することにした。
抗RANTES抗体(44820円)の購入資金の一部にする。
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