研究課題/領域番号 |
26460183
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
渡辺 渡 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (50399218)
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研究分担者 |
明石 敏 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (10648596)
黒川 昌彦 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (80186527)
吉田 裕樹 九州保健福祉大学, 薬学部, 講師 (90469411)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | RSV / 肺炎球菌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、臨床でRSV肺炎の重症化には肺炎球菌が関与する、という仮説を基にRSVマウス感染モデルを用いて不活化肺炎球菌の感染病態重症化の作用機序について、肺炎増悪化の知見が集積している汎用難燃剤と比較して明らかにすることである。研究初年度、臨床分離株SP-3の不活化検体でRSV肺炎の増悪化傾向が見られたが、その後に再現性の低さが問題となった。そこで、次年度から標準株SP-1に切り替えてウイルス感染の初期応答から再検証を進めた。その結果、肺炎重症化とは逆に、不活化肺炎球菌がRSV感染の初期応答や炎症を強く抑制することをタンパクアレイや肺病理組織学的検討等から見出した。そして最終年度は、①不活化肺炎球菌は本当にRSV肺炎の増悪化を示さないのか?②感染初期の強い炎症抑制効果は、結果として肺炎を軽減するのか?の2点に注力して研究を行った。 ①に関しては、不活化肺炎球菌の増量やRSV感染前後での投与スケジュールを検討したが、明確なRSV肺炎の増悪化結果は得られなかった。(ホルマリンで)不活化した肺炎球菌では菌自体の産生因子などが欠如するため、臨床を反映できない可能性が示唆された。一方、②に関しては、不活化肺炎球菌の複数回の前投与により、肺におけるRSV増殖のピーク時において有意なウイルス増殖抑制効果が認められた。また、病理組織学的には、肺葉でのバラツキはあるが炎症細胞の浸潤抑制も見られ、肺炎回復期(感染後14日)でもその傾向が認められた。 本研究を通じて、RSV肺炎の重症化への肺炎球菌の関与は明確にできなかった。しかし、不活化肺炎球菌のRSV感染初期応答への強い抑制効果を見出し、この作用機序を解析することは新たなRSV感染症対策に応用できる可能性が示された。今後、次期の科研費助成事業(基盤C;課題番号17K08405)に引き継いで詳細な解析を進めていく。
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