研究課題
ヒトで発現した薬剤性肝障害(DILI)を実験動物レベルで再現することは困難であるための、その前臨床においてDILIのリスクを評価することは難しい。一方で、米国FDAの報告では、これまでにDILIを引き起こすことが知られている薬物の多くがミトコンドリア障害性(mitochondrial permeability transition: MPT)を持つことから、ミトコンドリアの障害がDILI発現の起点になる可能性について検証するため、本年度においてはミトコンドリアの膜透過性を制御しているCyclophilin D knockout(CypD KO)マウスを用いた検討を行った。その結果、頻度は低いものの臨床で劇症肝炎のリスクが高いベンズブロマロン(BBR)において、その代謝活性化によりMPTが誘導されることを明らかとした。さらにこの代謝活性化をマウスIn vivoにおいて再現するためにCYP誘導剤(Dexamethasone(DEX))とBBRの併用によりマウスIn vivoにおいてMPTが誘導され、肝障害が発現することを見出した。さらに、CyPD KOマウスにおいては、これら肝障害の発現が抑制されており、肝障害の発現には、代謝酵素による代謝活性化とそれに続くMPTの誘導が関わることを明らかとした。当研究室ではBBRと同様に、肝障害が原因で市場撤退となったトログリタゾンにおいても過去にMPTを誘導することを明らかとしている。本研究の遂行により得られたこれら知見は、肝障害の発現メカニズムを明らかとすると共に、今後新たに生まれる新薬における肝障害リスク低減のための新たな指針を与えるものとなることが期待できる。
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