研究課題/領域番号 |
26460191
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 武人 東京大学, 医学部附属病院, 薬剤主任 (00376469)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 薬物動態学 / 血液透析 / 投与設計 / クリアランス / 透過性 |
研究実績の概要 |
血液透析(HD)導入患者に対する薬物投与設計において、投与する薬物のHDによる除去率(fd)やダイアライザーのクリアランス(CLHD)は重要なパラメーターであるが、その定量的予測は困難であるのが現状であり、特にHD実施条件をも含めた解析に関する報告は極めて限られている。 そこで、本研究ではHD実施条件とfdおよびCLHDの関連性について、特にこれまで重視されることのなかったダイアライザーの透過クリアランス(KoA)に着目して解析を行う。すなわち、種々の薬物とダイアライザーの組み合わせについてin vitro実験を行ってKoAを実測しfd、CLHDの予測を行い、HD導入患者における実測値と比較することで予測精度を確認する。これらの結果を統合しHD導入患者におけるfdおよびCLHDを予測する方法論を確立することが本研究の最終的な目的である。 平成26年度には、申請者らが過去に実施した持続血液濾過透析(CHDF)膜のクリアランスを測定する実験手法を応用し、in vitro HD潅流回路を組み立て、CLHDの実測を行うことを主な検討項目として研究を進めたが、技術的な問題から実験系の構築に予測以上の時間を要した。現在はカテーテル径の調整や送液ポンプ設定の最適化などにより克服の目処は立ってきており、間もなくin vitro実験を開始できる見込みである。一方で、KoAの実測において必要となるLC-MS/MSによる薬物定量系の構築や、in vivoデータ取得のためのHD導入患者の臨床検体の収集は順調に進行していることから、平成27年度以降にCLHDやfdの実測データを取得し、薬物動態学的解析を進める基盤を構築することができたと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度には、申請者らが過去に実施した持続血液濾過透析(CHDF)膜のクリアランスを測定する実験手法を応用し、in vitro HD潅流回路を組み立て、CLHDを複数の薬剤について実測を行うことを主要な目的として研究を行った。 HDはCHDFと比較して透析液流量が非常に大きいことから、4時間の間安定して送液することが技術的に難しく実験系の構築に予測以上の時間を要した。現在はカテーテル径の調整やそう液ポンプ設定の最適化などを進めており、程なくin vitro実験を開始できる見込みである。 一方で、KoAの実測において必要となるLC-MS/MSによる薬物定量系の構築や、2年度目以降に解析を予定しているHD導入患者の臨床検体の収集は順調に進行している。 上記の事項を総合的に考慮し、本研究は「概ね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度までの検討事項を基に、平成27年度以降にはin vitro HD潅流回路を用いてKoAの実測を速やかに実施する。対象薬剤としては臨床的にHD患者に多く用いられ、HD導入患者に対する投与量設計が重要となりやすい抗菌薬、抗癌剤などを中心に40~50薬剤を想定している。ただし、in vitroデータとin vivoデータの整合性確認をより早期に達成するため、KoAの実測においては後述の残検体における薬物血中濃度実測値が入手しやすい薬物の優先順位を上げて検討を進める予定である。 一方でin vitro実験と並行してHD導入患者の生化学残検体の収集も継続し、血清中薬物濃度の測定を行う。平成26年度も残検体の収集は順調に進行しており、平成27年度以降に順次血中濃度分析を進める予定である。 平成28年度には、当初の計画に従い、KoAとCLHD、およびfdの関係性について定式化し、公開を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度には、申請者らが過去に実施した持続血液濾過透析(CHDF)膜のクリアランスを測定する実験手法を応用し、in vitro HD潅流回路を組み立て、CLHDを複数の薬剤について実測する予定であった。 しかし、HDはCHDFと比較して透析液流量が大きく安定して送液するための実験条件設定に予測以上の時間を要した。そのため、実験の効率化のために平成26年度の購入を予定していた送液ポンプの購入を一時見合わせた。また同じく購入予定であった牛血清、透析液などの消耗品の購入も一時的に見合わせた。そのため、次年度使用額が生じる結果となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
理由の欄に述べた事由については、ポンプの送液量調整や透析膜との連結部の強化、カテーテル径の最適化などにより解決の道筋が立ってきている。今後、平成26年度に一時的に購入を見合わせた研究資材を購入し、検討を進める予定である。
|