研究課題
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型(Progressive familial intrahepatic cholestasis type 1; PFIC1)、2型(PFIC type 2; PFIC2)は、難治性の肝内胆汁うっ滞を呈する小児肝疾患であり、肝移植が奏効しない場合には、思春期前に致死性の経過をたどる。従って、新たな治療法の開発が切望されている。両疾患の病態発症には、ABCトランスポーターBile salt export pump(BSEP)の機能低下が関連すると考えられている。研究代表者は、尿素サイクル異常症治療薬であるフェニルブチレートが、BSEPの機能を活性化する作用を有すことを見出していた。本年度は、PFIC1、PFIC2に対するフェニルブチレートの有効性、安全性を検証する探索的臨床研究を企画し、複数の医療機関の協力のもと試験を実施した。フェニルブチレートの服用により、PFIC2患者の肝機能生化学検査値、病理像は著明に改善した。また、胆汁うっ滞に起因する難治性掻痒感も肝機能生化学検査値の改善とともに消失した。本薬剤の難治性掻痒感に対する治療効果は、PFIC1患者においても認められた。以上の薬理作用に関する薬事承認の取得に向け、現在、医師主導型治験の実施体制を整えている。BSEP以外の疾患と関連するABCトランスポーターに関しても、各トランスポーターの発現量制御に関わる分子機構を明らかにすべく、解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
難治性の肝内胆汁うっ滞を呈する代表的な小児疾患である進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に対するフェニルブチレートの有効性、安全性を検証する探索的臨床研究が当初の計画通り終了した。
BSEP以外の疾患と関連するABCトランスポーターについて解析を進め、各トランスポーターの機能活性化方法を開発する。
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