研究課題
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型(Progressive familial intrahepatic cholestasis type 2; PFIC2)は、小児期に発症する最も重篤な肝疾患であり、無治療の場合には致死性の経過をたどる。研究代表者は、これまでの基礎研究から、PFIC2症例では、多くの場合、胆汁酸トランスポーターBile salt export pump(BSEP)の細胞膜発現量の低下に伴い、病態が進展することを見出している。また、尿素サイクル異常症治療薬であるフェニル酪酸ナトリウムが、BSEPの分解を抑制し、細胞膜発現量を増加させる作用を有することも明らかにしている。さらに以上の知見に基づき、PFIC2に対するフェニル酪酸ナトリウムの有効性、安全性を検証するため、PFIC2症例を対象とした探索的臨床研究を行い、当該疾患症例の生化学検査値、肝病理組織像が、本薬剤の服用により改善することを見出している。本研究では、フェニル酪酸ナトリウムに比して高活性の肝内胆汁うっ滞症治療薬の開発を指向し、BSEPの分解に関わる分子群を探索した。その結果、細胞膜に発現するBSEPをユビキチン化し、BSEPの細胞膜からの内在化、分解を促す分子群を複数同定した。また、BSEP以外の疾患と関連するABCトランスポーターに関しても、その分解抑制が、各疾患の治療に繋がるかについて検証すべく、分解に関わる分子機構の解明に着手した。具体的には、機能低下がアテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病などのリスクとなることが報告されているABCA1を対象とし、当該分子の分解に関わる分子群を探索した。その結果、ABCA1の細胞膜におけるユビキチン化は、LXRβとの相互作用により抑制されること、本相互作用が、ABCA1のリン酸化により制御されていることを見出した。遺伝子改変動物を用いた解析から、本制御機構は、肝実質細胞には存在するものの、マクロファージ、小腸上皮細胞には存在しないことが示唆された。
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