研究課題/領域番号 |
26460195
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
池村 健治 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (70513935)
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研究分担者 |
奥田 真弘 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (70252426)
岩本 卓也 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (30447867)
荒木 俊光 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (70343217)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 潰瘍性大腸炎 / P-糖タンパク質 / タクロリムス / CYP3A |
研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎は、原因不明の難治性疾患であり、患者数は増加の一途を辿っている。治療薬のタクロリムス(TAC)は体内動態の個体内・個体間変動が大きく、その要因には薬物代謝酵素CYP3Aや薬物排泄トランスポータP-糖タンパク質(P-gp)の発現量が関与している。しかしながら、TACの体内動態に及ぼす潰瘍性大腸炎の影響は明らかではない。本研究では、潰瘍性大腸炎モデルラットを作製し、TACの体内動態変動とその要因に関する検討を行った。 Wistar系雄性ラット(9週齢)を用い、5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)水溶液を7日間、自由飲水させ潰瘍性大腸炎モデルラットを作製した。DSS群及びSham群にTACを経口投与した後、経時的に採血を行い、全血中TAC濃度は、LC-TOFMSにより測定した。採血終了後に小腸、大腸及び肝臓を摘出し、P-gp及びCYP3A mRNA発現量はRT-PCR法により測定した。また、各臓器の粗膜画分に発現するP-gpはWestern blot法により、ミクロソーム中CYP3A活性は、テストステロンの6b水酸化活性を測定することにより評価した。 DSS群ではSham群と比較し、大腸炎の重症度を示すdisease activity indexの顕著な増加を示した。DSS群にTACを経口投与したところ、TACの血中濃度-時間曲線下面積(AUC)はSham群に比べ約2.6倍増加していた。DSS群における小腸及び大腸のP-gp mRNA及びタンパク発現量は、Sham群と比較して有意に低下していたが、各臓器におけるCYP3A活性及びmRNA発現量は両群間で差が認められなかった。これらの結果から、潰瘍性大腸炎モデルラットでは、TACの経口吸収が増加することが明らかになり、その機構の一部に小腸粘膜のP-gp発現量の減少が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、潰瘍性大腸炎モデルラットを用い、TACの体内動態変動及び腸管P-gp及びCYP3Aの発現変動を検討し、これら変動に及ぼすマイクロRNAの同定までを予定したが、腸管におけるマイクロRNAの発現変動については検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
腸管におけるマイクロRNA発現量をマイクロアレイによる網羅的解析を行い、変動がみられたmiRNA の中から、in silico解析によりP-gp に結合部位を有するmiRNAを絞り込む。ヒト胎児腎由来のHEK293細胞にluciferase遺伝子の下流にMDR1の3'-非翻訳領域の配列を導入したluciferase reporter vectorとmiRNA mimicをダブルトランスフェクションし、同定したmiRNA による発現調節機構について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に、マイクロアレイ解析を行い、その結果を基に成果発表を目的とした海外旅費を計上していたが、予定していたマイクロアレイ解析ができなかったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、マイクロアレイ解析及び成果発表は次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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