研究課題/領域番号 |
26460197
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
檜垣 和孝 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (60284080)
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研究分担者 |
大河原 賢一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30291470)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | セロトニン枯渇 / 有機アニオン系化合物 / 経口吸収挙動 / 非線形性 / bioavailability / 分泌 / GITA model / 小腸内滞留性 |
研究実績の概要 |
消化管の運動・機能に深く関与しているセロトニン(5-HT)の薬物吸収への影響を明らかにするため、低5-HT状態(5-HT枯渇)における薬物吸収挙動を有機アニオン系のモデル薬物phenol red(PR)を用いて検討してきた。その中で、PRの経口bioavailability(BA)は、5-HT枯渇状態で有意に低下し、その原因の一つとして有機アニオン系化合物の小腸管腔中への分泌を担うMrp2及びBCRPの機能亢進が示唆された。この現象は、PRの経口吸収挙動が非線形性を示す可能性を示していた。そこで今年度は、PRの経口吸収挙動を高投与量にて検討した。その結果、PRのBAは、高投与量時にはむしろ増大することが明らかとなった。ラット小腸粘膜を用いたin vitro透過試験では、低濃度時には分泌方向優位かつ5-HT枯渇により吸収方向の透過性低下と分泌方向の透過性亢進が確認されていたが、高濃度時では5-HT枯渇により吸収方向の透過に若干の増加傾向はあったものの顕著な変化は認められなかった。これはMrp2とBCRPは発現亢進しているもののPRが高濃度であるため分泌は飽和し分泌亢進の影響が小さくなったこと、またparacellular routeの開口などにより受動拡散による輸送亢進が起こったため、見掛け上、変動が見られなかったものと考えられた。しかし、一方でin situ closed loop法により吸収性を評価した結果、5-HT枯渇により吸収速度定数kaは有意に増大することが示されており、この点については更なる検討が必要と考えている。しかし経口投与後のBAは高投与量では増大していることから、やはり吸収方向の透過は増加傾向にあるのではないかと推察している。また、このBAの増大には、5-HT枯渇時に観察された空腸上部以下の部位での滞留性増大が寄与していると考えられた。更に、GITA modelを用いてPRの経口吸収挙動を解析したところ、5-HT枯渇時には、小腸及び肝臓におけるPRの代謝・胆汁中排泄亢進の可能性が考えられた。
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