研究課題/領域番号 |
26460199
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
廣田 豪 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80423573)
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研究分担者 |
家入 一郎 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60253473)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬物トランスポーター / バイオマーカー / クルクミン |
研究実績の概要 |
ウコンの成分であるクルクミンは、抗がん作用をはじめとした様々な薬理効果が示されていることから近年注目されている物質であるが、薬物トランスポーターを介した相互作用を引き起こすことが示唆されている一方、遺伝子発現を変動させることも報告されている。 クルクミンの曝露によるBCRP発現発現への影響評価を行うため、消化管由来細胞に対するクルクミン暴露実験を研究実施計画に基づき行った。実験は結腸癌由来細胞であるCaco-2細胞にクルクミン100μMを72時間曝露後、total RNAを抽出した。mRNAは、逆転写反応、Quantitative real-time PCRにより測定した。その結果、BCRP mRNAの発現は、クルクミン曝露により有意に減少することが示された。また、この減少はmRNAレベルにて認められたため転写レベルによる制御機構がクルクミンによる影響において重要な役割を果たしていると考えられる。 本結果に基づき、クルクミンが生体内のBCRP機能へ与える影響を評価するため、ヒト臨床試験を研究計画より前倒しで行った。BCRPにおける既知の遺伝子多型である 421 C>Aについて遺伝子診断を行い、各遺伝子型に層別化した上で実施した。Phase1ではスルファサラジン単独服用、Phase2ではクルクミン服用4、5日経過後にスルファサラジンを服用した。既に、臨床試験自体は終了しているが血中濃度測定やそれに伴うデータ解析が次年度以降早急に行うべき実験となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画においては初年度は主にクルクミンによるBCRP発現変動機構を明らかにする予定であったが、平行して臨床試験を行うことができた。血中濃度解析などについては次年度行うことになるが、最も実施に期間を要することが想定された試験をすでに終えたことから順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
既に臨床試験を終えたことから、スルファサラジン血中濃度の測定を行った上で、母集団薬物動態解析等を含むデータ解析を行い、クルクミン曝露による影響を定量的に評価するとともに薬物動態変動要因の抽出を試みる予定である。また、血液中からmicroRNAを分離抽出し、realtime PCR法により定量することでBCRP機能予測バイオマーカーとなりうるのかについても合わせて検討する。クルクミンによるBCRP発現変動メカニズム解明も合わせて行っていく計画であり、これについてはBCRP発現上昇を認めたCaco2細胞を用いたアッセイによりtotal RNAを抽出したのち、microRNA発現解析やエピジェネティック解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初期のin vitro studyにて、クルクミンによるBCRP発現への影響が顕著に見られたため、実施に最も期間がかかることが予想される臨床試験を計画より前倒しで行った。そのため、発現機構解明に関する研究が次年度以降に一部持ち越されたため、次年度使用額が生じる結果となった。ただし臨床試験が早期に終了できたため、研究計画全体としては予定よりも迅速に行えていると考える。
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次年度使用額の使用計画 |
臨床試験により得られたサンプルの血中濃度測定、解析を行う予定である。それと同時にBCRP発現変動要因について詳細な機構解明を合わせて行っていく。
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