研究実績の概要 |
最終年度には前年度実施した臨床試験のmiRNAサンプル解析を行った。同時に行った臨床試験においてmiR-328がBCRP機能予測バイオマーカーとなることを明らかにしたことから(Gotanda et al., 2016, Scientific reports)、miR-328を含むmiRNA発現解析を行った。その結果、一部のmiRNAはクルクミン投与により変動を示していたが、BCRP機能変動のバイオマーカーとなるmiRNAは見出されなかった。しかしながら、解析の過程で血中miRNAの安定的な保存条件が見出されたことは今後のmiRNA研究において重要な知見となった。 研究期間全体を通して、クルクミンがBCRP発現にmRNAレベルで影響を及ぼすことを明らかにした。同機構がBCRP基質薬物の体内動態に及ぼす影響を明らかにするため、ヒトを対象とした臨床試験を行った。BCRPの既知の遺伝子多型であるBCRP 421C>Aについて遺伝子多型診断を行い、各遺伝子型に層別化した被験者を対象とした。被験者にはBCRP基質薬物であるスルファサラジン単独服用(Phase I)、クルクミン服用4, 5日経過後にスルファサラジンを服用(Phase II)の2期の試験に参加してもらった。採血後のスルファサラジン及びその代謝物の濃度測定、薬物動態パラメータ推定から、BCRP基質薬物の体内動態にはクルクミンの前投与は影響を及ぼさないことが示唆された。このことから、クルクミンによる相互作用の防止には薬物投与との間隔を4, 5日空けることが重要であることが示された。本研究成果は査読付論文として報告済みである(Tokumoto et al., 2016, Journal of Drug Metabolism & Toxicology)。
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