研究課題
腫瘍中には、自己複製能と多分化能を有するがん幹細胞が存在することが分かってきており、がん幹細胞の存在ががんの再発や治療抵抗性に寄与していると考えられているが、その詳細は不明である。今回、sphere形成能を基にしたcancer stem-like cells (CSCs:がん幹細胞様細胞) モデルを用いて網羅的遺伝子解析を実施した。特殊加工して細胞がプレート表面に接着しない条件で培養すると、腫瘍細胞のほとんどは死滅するが、CSCsと考えられる一部の細胞はsphereを形成し細胞死から回避することが分かっている。Sphere形成に関与する遺伝子の変動やSphere形成に関与するシグナル伝達経路を同定するため、マイクロアレイを実施し網羅的遺伝子解析を実施したところ、複数の遺伝子発現の変動が認められ、特にsecretogranin II(SCG2), carbonic anhydrase XII(CA12), lysosomal-associated membrane protein family member 5(LAMP5), immediate early response 3(IER3), diacylglycerol O-acyltransferase 2-like 6(DGAT2L6), SMAD family member 5 peptidyl arginine deiminase type III(PADI3)は、コントロール細胞と比較して20倍以上の遺伝子発現の亢進が認められた。さらに、マイクロアレイ解析の結果より、CSCs に重要なシグナル伝達経路として、Akt シグナル伝達経路の関与が示唆された。Akt は、多くの腫瘍で強く活性化されており、phosphatidyl inositol 3-kinase (PI3K) によるphosphatidyl inositol (3,4,5) triphosphate (PIP3) の産生によって活性化される。CSCsのAktシグナル伝達経路の活性化が、抗がん薬耐性にも寄与している可能性が示唆された。
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