近年、細胞外に放出される分泌型microRNA (miRNA) が新たなバイオマーカー候補として期待されている。これまでに申請者らは、miRNAが動脈硬化発症のマーカーとなり得る可能性に着目し、動脈硬化モデルマウスの組織に特異的な発現を示すmiRNAをマイクロアレイ法により探索した。その結果、両群間で2倍以上発現が変化するmiRNA群を得た。また、申請者らはこれまでに、名古屋市立大学病院心臓・腎高血圧内科の外来を受診した、古典的な心血管危険因子 (高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙) を有する無症候かつ無治療の患者における分泌型miRNAの発現を検討し、特定のmiRNAの発現が有意に変動することを見い出した。本申請課題では、動脈硬化発症初期に特異的なバイオマーカーとなる分泌型miRNAに着目し、動脈硬化の早期発見法の確立ならびに患者個々の症状にあわせたオーダーメイド医療への応用を目指して解析を行った。計画している具体的な項目は、(1) 動脈硬化の発症に特異的な分泌型miRNAの機能解析、(2) 分泌型miRNA検出条件の確立、(3) 臨床検体におけるmiRNA発現と血管内皮障害の相関の検討、の3つである。本研究ではまず、得られた分泌型miRNAをノザンブロッティングやリアルタイムPCR法によりスクリーニングすることで絞り込み、偽陽性を除外した。さらに、培養細胞や動脈硬化モデルマウスを用い、得られたmiRNAの標的遺伝子の同定や、動脈硬化好発部位における血管内皮機能への影響等を検討することで、動脈硬化発症に特異的なmiRNAの機能解明を目指した。
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