研究課題/領域番号 |
26460204
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 智夫 北里大学, 薬学部, 教授 (30223168)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経口投与 / バイオアベイラビリティ / CYP3A4 / 薬物相互作用 / 定量的予測 |
研究実績の概要 |
CYP3A4基質であるトリアゾラム(TRZ)およびアルプラゾラム(ALP)について、ヒト肝ミクロソームを用いた代謝実験を行い、それぞれ2種の代謝物(α-水酸化体および4-水酸化体)の生成に対する代謝パラメータ、ミカエリス定数(Km)および最大代謝速度(Vmax)を求めた。既に実施している、ヒト小腸ミクロソームを用いた代謝実験および、Caco-2細胞を用いた輸送実験で得られた各種パラメータ値を用いて、我々が構築してきたITAM(Intestinal transit, absorption and metabolism)モデルに従って、TRZ および ALP の経口投与後のバイオアベイラビリティを算出した。その結果、TRZ および ALP のバイオアベイラビリティは、それぞれ 0.66 および 0.79 となった。ヒトにおける TRZ および ALP のバイオアベイラビリティは、0.44 および 0.87 と報告されていることから、両薬物のバイオアベイラビリティを定量的に予測可能であることが示された。 次に、CYP3A4阻害薬であるケトコナゾールについて、ヒト小腸および肝ミクロソームを用いた代謝実験を行い、ミカエリス定数(Km)および最大代謝速度(Vmax)を求めた。また、Caco-2細胞を用いた輸送実験を行い、ケトコナゾールの小腸上皮細胞内動態パラメータを算出した。得られた各種パラメータ値を用いて、ITAMモデルに従ってケトコナゾールの血中濃度推移を予測したところ、AUCは報告値に近い値となったが、消失半減期は報告値の約 4 倍となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薬物間相互作用を予測する際には、基質および阻害薬の両者について、単独投与時の体内動態が正確に予測できている必要がある。これまでの検討から、基質(トリアゾラムおよびアルプラゾラム)については、単独投与時の血中濃度推移が予測可能であることが示されている。一方、阻害薬であるケトコナゾールについては、単独投与時の体内動態が予測できているとは言えない状況である。現在、その原因を追究しており、ケトコナゾール単独投与時の体内動態が予測可能となれば、直ちに相互作用に予測を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト肝ミクロソームを用いた代謝阻害実験を行い、ケトコナゾールによる代謝阻害(競合詐害)パラメータを求める。さらに、CYP3A4阻害薬としてエリスロマイシンおよびリトナビルを用いて、ヒト肝ミクロソームにおける代謝阻害実験を行い、阻害パラメータを求める。エリスロマイシンおよびリトナビルは mechanism-based inhibitorとして代謝阻害作用を表すため、CYP3A4不活性化のパラメータ(K'app、kinact)値を算出する。得られたパラメータ値を用いて、ITAMモデルに従って CYP3A4 の基質であるトリアゾラムおよびアルプラゾラムとの相互作用を定量的に予測する手法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成度」の項で記載した通り、阻害薬であるケトコナゾールについて、単独投与時の体内動態が予測できていない。そのために、ケトコナゾールを用いた代謝阻害実験ができていない。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に、エリスロマイシンおよびリトナビルを用いて、ヒト肝ミクロソームにおける代謝阻害実験を行う予定であるが、同時にケトコナゾールによる代謝阻害実験を実施する。
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