研究課題/領域番号 |
26460207
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
長谷川 弘 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (80218453)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メチオニン / ホモシステイン / 代謝フラックス / 安定同位体 / 腎不全 / 1炭素転移 / GC-MS / メチル基転移 |
研究実績の概要 |
5/6腎摘除ラット作出後の飼育期間を長くすることによって、より腎機能が低下した状態における血漿中 Hcy 濃度上昇の機構を明らかにすることを目的とし、偽手術ラット、術後2週および5週飼育した5/6 腎摘除ラットに対して [2H7]Met および [2H4]Hcy の持続静脈内投与法による代謝フラックス解析を施行した。その結果、5/6 腎摘除後の飼育期間を長くすることによって、血漿クレアチニンが上昇した一方で、術後5週飼育した5/6 腎摘除ラットの血漿ホモシステイン濃度は術後2週の5/6 腎摘除ラットに比べてむしろ低値を示した。また、術後5週飼育した5/6 腎摘除ラットでは、術後2週飼育したラットに比べてホモシステインの再メチル化代謝回転速度が低下したのに対して、メチオニンの脱メチル化代謝回転速度およびホモシステインのイオウ転移代謝回転速度は大きくなった。これらの結果より、5/6 腎摘除後の飼育期間が長くなることによって、メチオニン-ホモシステイン-シスタチオニン代謝系に関与する酵素の発現に変化がおきていると考えた。そこで、偽手術ラットおよび術後5週飼育した5/6腎摘除ラットの肝臓および腎臓を用い、real-time PCR法を用い、メチオニン-ホモシステイン-シスタチオニン代謝系に関与する酵素遺伝子の発現解析を行った。その結果、メチオニンの脱メチル化反応に関わる酵素系の肝臓における発現が、いずれも偽手術ラットに比べて5/6 腎摘除ラットで亢進していた。また、イオウ転移反応に関わる cystathionine γ-lyase の肝臓での発現も 5/6 腎摘除ラットで亢進していた。これらの結果から、5/6腎摘除によって減少したホモシステイン代謝酵素の減少を肝臓が代償し、メチオニン-ホモシステイン-シスタチオニン代謝系を維持しているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液透析患者では中等度の高ホモシステイン血症を呈していることが多い。そこで、5/6腎摘除後の飼育期間を長くすることで、中等度の高ホモシステイン血症の病態モデルを作出しようと考えた。しかし、術後5週飼育しても、目的とした病態モデルが作出できなかった。代謝フラックス解析の結果をふまえ、術後の飼育期間が長くなることで、腎実質が減少した分を肝臓が補っているものと仮説をたて、肝臓および腎臓におけるメチオニンーホモシステインーシスタチオニン代謝酵素遺伝子の発現解析実験を行った。当初設計したプライマーでは解析できないことがあり、再設計等を行ったため、実験の遂行がやや遅れぎみではあったが、仮説を裏付ける結果を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
腎機能低下に伴う高ホモシステイン血症が血管系に及ぼす影響を検討する。5/6腎摘除ラットより摘出した動脈(胸部大動脈を用いる予定)を用い、血管収縮弛緩反応を測定する。中等度の高ホモシステイン血症とするため、高メチオニン食での飼育を行う。また、これまでの結果から、5/6腎摘除ラットでは、S-アデノシルメチオニンを基質とするメチル基転移反応が亢進していることが予想された。メチル基転移反応の中には、カテコールアミン類や非対称性ジメチルアルギニン等の生成に関わる反応であるので、これらの生体成分の測定と反応に関与する酵素遺伝子の発現解析も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイによる遺伝子発現解析に要する経費を計上したが、所属部署設置のreal-time PCRで行ったこと、論文執筆が遅れ英文校閲費、投稿費がかからなかったことから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子解析用試薬等の購入費に充足する。また、複数の論文を執筆する予定なので、その英文校閲費及び投稿費にあてる。
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