研究課題/領域番号 |
26460208
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
岸本 久直 東京薬科大学, 薬学部, 助手 (80723600)
|
研究分担者 |
井上 勝央 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50315892)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 非攪拌水層 / 吸収促進剤 / 受動拡散 / 粘液層 |
研究実績の概要 |
本年度は、脂溶性の異なる薬物の腸管膜透過性に及ぼす粘液層の影響について詳細な検討を行った。被験薬物としてBCS Class I及びClass IIに分類される化合物のうち、脂溶性が異なる薬物を数種類選択した。また、薬物の膜透過性評価はラット摘出腸管を用いたin vitro sac法により行い、粘液除去剤であるdithiothreitol (DTT) を投与することで腸管吸収性に対する粘液層の影響を評価した。その結果、BCS Class I化合物であり高脂溶性化合物であるpropranolol (log P = 2.75) の腸管膜透過性は、ラット十二指腸部においてDTT前処理による影響は認められなかったのに対し、BCS Class II化合物 (flurbiprofen, rifampicin, griseofulvin) の腸管膜透過性はDTT前処理によって顕著に増大した。一方、ラット空腸部においては、DTT前処理によってBCS Class I化合物 (antipyrine, theophylline) 及び一部のBCS Class II化合物 (rifampicin, griseofulvin) で、その腸管膜透過性が顕著に増大した。さらにrifampicin及びgriseofulvinの腸管膜透過性に対するDTT前処理の影響を腸管各部位で検討したところ、腸管上部(十二指腸及び空腸部)において顕著に増大したのに対し、腸管下部(空腸及び結腸部)では影響は認められなかった。これらの結果より、DTT前処理後における薬物の腸管吸収性はBCS分類に応じて変化する可能性が示され、さらに腸管膜透過に対する粘液層の影響は、薬物の物理化学的性質だけでなく腸管部位によっても異なる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題における研究目的の一つである「薬物の膜透過性に対するmucinの影響を、脂溶性及び水溶性薬物を用いて定量的に評価する。」に対し、重要な結果を得ることができた。また、投稿論文にて報告した、非攪拌水層を標的とするNOの吸収促進作用に加え、薬物吸収自体に及ぼす非攪拌水層の影響を示す重要な知見を得ることができた。従って、本研究課題の基盤となる研究成果が得られていることより、総合的に研究計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題における研究目的の一つである「薬物吸収を制御する分子機構の解明」に加え、「膜透過の寄与に関する評価系の確立」に関して、申請した研究計画に従って研究を進めていく予定である。また、膜透過性に及ぼすmucinの影響について、その構造・分子サイズの違い及び種差を念頭に統合的な解析を行うだけでなく、医薬品開発において重要な情報となることを考慮し、柔軟な研究計画により研究を推進していく予定である。
|