研究課題/領域番号 |
26460210
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤田 卓也 立命館大学, 薬学部, 教授 (00247785)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アミノ酸トランスポーター / 電位依存性カルシウムチャネル / gabapentin |
研究実績の概要 |
Gabapentin (GBP) は GABA 作動性薬として開発されたが、GABA 受容体や GABA transporter に直接作用しないという報告があり、その詳細な作用機序は十分に解明されているとはいえない。GBP の作用機序として電位依存性 Ca2+ channel (VGCC) accessory unit である α2δ subunit への結合を介した VGCC 活性の阻害効果が報告されている。現在、臨床使用されている Ca2+ channel blocker の標的分子は L-type α1 subunit であるのに対し、GBP は α2δ subunit を標的としており、GBP の VGCC に対する作用機序の検討は GBP の臨床適用の拡大を図る上でも興味深い。一方、GBP は Na+ 非依存性中性アミノ酸輸送系 system L を介して輸送されることが報告されている。VGCC 活性化に対する GBP の IC50 値 (10~100 μM) が Kd 値 (~100 nM) と大きく乖離しているのに対して、GBP 輸送における Kt 値 (~100 μM) とほぼ一致することから、GBP の薬理作用発現に VGCC と細胞内輸送が関連している可能性が考えられる。そこで、本検討ではマウス大脳皮質初代培養神経細胞を用いて、GBP の輸送特性と VGCC 阻害作用を検討するとともに、GBP の VGCC 阻害と system L を介した細胞内輸送との関連についても検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス大脳皮質初代培養神経細胞への GBP の輸送は Na+ 非依存的かつ pH 依存的であり、その輸送は中性アミノ酸輸送系 system L の基質となる化合物で有意に阻害されたが、GABA では阻害されなかった。一方、KCl 脱分極刺激により増大する [cGMP]i を GBP が濃度依存的に阻害し、さらに他の [Ca2+]i 評価系でも同様の結果が得られた (IC50 = 22~111 μM)。しかし、得られた IC50 値と GBP の結合実験から得られる Kd 値 (135 nM) とは約 1000 倍の乖離が認められた。GBP の VGCC 活性抑制作用は中性アミノ酸輸送系 system L の基質により濃度依存的に回復したが、他のアミノ酸輸送系の基質となる化合物では回復効果が認められなかったことから、GBP の VGCC を介した細胞内への Ca2+ 流入と中性アミノ酸輸送系 system L を介した GBP の細胞内取り込みの関連性が示唆された。 以上の検討から、ganapentin の細胞内輸送と薬理作用には密接な関連があることが示唆され、中枢でのトランスポーター機能が薬物の作用発現に重要な働きをしている1例を示し得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本申請者は、これまでにニューロン、アストロサイトへの TCA 回路中間体の輸送特性および TCA 回路中間体の輸送に関与するトランスポーターの同定に関して検討を重ねており、ラット大脳皮質由来のアストロサイト初代培養系において、Na+-coupled dicarboxylate transporter NaC3 が succinate の輸送を担っていることを明らかにしている。また、予備検討によりアストロサイトには organic anion transporter OAT3 が発現していることが明らかとなった。アストロサイトにおける OAT3 の機能に関しては検討がなされておらず、その生理的意義は不明であるものの、アストロサイト内で合成された TCA 回路中間体を細胞外に放出する経路として関与している可能性がある。 本研究では、マウス大脳皮質より単離した初代培養アストロサイトにおける NAAG の輸送特性、およびNaC3 と OAT3 との機能的連関について検討を行う予定である。
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