研究課題/領域番号 |
26460210
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤田 卓也 立命館大学, 薬学部, 教授 (00247785)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | Na+共役型ジ・トリカルボン酸トランスポーター / TCA回路中間体 / 中枢神経系 / ペプチドトランスポーター |
研究実績の概要 |
N-acetyl-L-aspartyl-L-glutamate (NAAG) は、哺乳類の中枢神経系において比較的高濃度存在するニューロペプチドであり、N-acetyl-L-aspartate と glutamate より合成される。NAAG はぺプチダーゼによる加水分解を受け N-acetyl-L-aspartate と glutamate を生成することより、脳内における glutamate 前駆体であると考えられる一方、グルタミン酸レセプターサブタイプ mGlu3レセプターの選択的アゴニストであることから、脳における NAAG の動態は重要と考えられる。これまでに、NAAG はラット脳より単離した peptide transporter PEPT2 と作用することが電気生理学的手法を用いた検討により報告されている。しかし、NAAG の輸送に関与するトランスポーターの分子的実態に関しては未だ明らかではない。一方、エネルギー代謝の非常に大きな脳では、citrate、α-ketoglutarate、malate 等の各種 TCA 回路中間体がエネルギー供給源として大変重要である。申請者は、これまでに中枢神経系における TCA 回路中間体の輸送に関与するトランスポーターの同定に関して検討を重ねており、Na+-coupled dicarboxylate transporters (NaC2 & NaC3) の関与を明らかにしている。本研究では、マウス大脳皮質より単離した初代培養アストロサイトにおける NAAG の輸送特性について検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスアストロサイトには PEPT2 mRNA の発現が認められ、PEPT2 のモデル基質である Gly-Sar の輸送を検討したところ、これまでの報告と同様 pH 依存的な飽和性の輸送系であり、その Kt 値は、pH 6.0 においては 77.1 ± 19.4 μM、pH 7.4 においては 79.5 ± 5.5 μM であった。また、アストロサイトにおける Gly-Sar 輸送は Tyr-Arg、Phe-Leu、Tyr-Gly、(Gly)3、cefadroxil によって顕著に阻害された。一方、アミノ酸である Gly や TRH は高濃度でも Gly-Sar の取り込みを阻害しなかった。さらに Eadie-Hofstee plot が直線性を示したことから、マウスアストロサイトへの Gly-Sar 輸送は1つの輸送系、つまり PEPT2 を介して行われると考えられる。これらの結果は、mPEPT2 発現 C6 glioma 細胞を用いた同様の検討より得られた結果と一致した。次にマウスアストロサイトにおける NAAG の輸送特性について検討したところ、その輸送活性は非常に低く、飽和性の輸送は認められなかったが、NAAG は Gly-Sar の輸送を IC50 値 2.23 ± 0.4 mM で有意に阻害した。mPEPT2-C6 glioma を用いた検討においても同様の結果が得られたことより、NAAG はPEPT2 の阻害剤とはなるものの基質としては認識され難いことが示唆された。また、NaC2 を発現するマウス初代培養ニューロン、hNaC2-HeLa、mNaC3-HeLa における NAAG の輸送を検討した結果、いずれも NAAG の輸送活性は認められなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、TCA回路中間体の NaC2 および NaC3 を介した輸送に関して、Zn2+やFe2+などの2価金属イオンあるいは、Al3+やFe3+の3価金属イオンの輸送活性制御に関しての検討を進める。予備的検討において、こうした金属イオンによりクエン酸やコハク酸などのNaCsを介した取り込み活性が顕著に上昇することが明らかとなっており、これらの要因が金属イオンとのキレート形成によるものなのか、トランスポーター本体との金属イオンとの相互作用に由来するものなのかを詳細に検討を進める。
|