研究課題/領域番号 |
26460211
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
三田村 邦子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (70242526)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乾燥尿ろ紙 / テトラヒドロコルチコステロイド / グルクロン酸抱合体 / LC/MS |
研究実績の概要 |
本年度は、LC/MSによる乾燥尿ろ紙中抱合型糖質コルチコステロイド代謝物測定法の開発のための検討を行い、以下の結果を得た。 1)はじめに、ろ紙に尿50 μLを塗布し、風乾後、尿が浸透した部分を裁断し、水、2%メタノール、等張リン酸緩衝液(PBS)、又は2%トリフルオロ酢酸(各々3 mL)中で超音波抽出した。固相抽出により脱塩後、LC/MS分析に付したところ、グルクロン酸抱合型テトラヒドロコルチコステロイド(THC-G)は水、硫酸抱合体はPBS中で抽出したときに最も回収率が高かった。また、ろ紙の種類(セルロース、ガラス繊維)、抽出時間(5~20分)では差異が無かった。そこで、セルロースろ紙を用い、抽出液にPBS、抽出時間を10分としたところ、全操作での絶対回収率は70~97%であった。 2)本法の再現性試験、添加回収試験を行ったところ、スクリーニングに用いるに足る精度、正確性を有していた。また、本法による乾燥尿ろ紙中THC-G濃度と、既報による液体尿中のそれは、良好な相関性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は1)乾燥尿ろ紙中ステロイド代謝物測定法の検討と2)三連四重極型質量分析計を用いる定量法の開発を計画していた。 1)に関しては、ろ紙の種類、抽出液の種類、抽出時間を最適化するとともにバリデーションも行い、今後、実試料に適用するための基礎的検討は安定性試験を残してほぼ終了した。また2)についても、リニアイオントラップ型質量分析計と両者の特性を考慮しながら最適な測定条件を検討中である。 以上の観点から、H27年度は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は最終年度であるので、H27年度の研究で残った課題について進めるとともに、それらの結果を踏まえて当初の計画を実施し、総括していく。その際、以下の点について重点的に研究を推進する予定である。 1.乾燥尿ろ紙を検体として用いるメリットは、尿の保存や輸送の簡便性であり、これらを保証するためには、ろ紙中で測定対象が安定に存在し得ることが重要である。そこで、乾燥尿ろ紙の保存条件(温度、保存期間)についても検討し、実用性について検証する。また、THC-G以外の疾患の指標となり得る尿中ステロイド代謝物についても対象を広げていくための検討を行う。 2.乾燥尿ろ紙を抽出操作を行うことなく、直接ペーパースプレーLC/MSに付すための条件検討を実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況を考慮しながら、器具、試薬等の発注を行っていたところ、当該年度内に発注したものの納品後の支払いが年度内に完了しなかったものが発生した。また、人件費・謝金についても3月度の支払額(作業時間)が年度末まで決定しなかったため、来年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
発注していた器具、試薬等は全て納品済みであり、使用し始めている。また、H27年度残余額とH28年度の助成金を合わせて予定通り研究を推進していく。すなわち、消耗品として購入済みあるいは購入予定の器具等を使用して操作を行う。また、消耗品として、ろ紙、固相抽出カートリッジ、移動相溶媒、添加剤などの購入、研究発表等の費用に使用する予定である。
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