研究課題/領域番号 |
26460212
|
研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
棚橋 俊仁 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (30380067)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 全ゲノムシークエンス / ヘリコバクターピロリ菌 / 薬剤耐性 / クラリスロマイシン |
研究実績の概要 |
全ゲノムシークエンス法(Whole-genome Sequencing)を用いて、単一塩基変異に加え、遺伝子欠失や増幅、逆位、転座などのあらゆるゲノム変化を俯瞰することにより、バクテリアゲノムの潜在的な病原因子を理解する研究手法が試みられつつある。全ゲノムの解読は困難であったが、シークエンス技術の急速な進歩により、2 日間で80 億塩基の解読が現在可能である。このゲノム解読技術を活用し、クラリスロマイシン耐性ヘリコバクターピロリ菌ゲノムを明らかにし、薬剤耐性を担う潜在的なゲノム変化を解明する。ゲノムエビデンスにもとづき、全員除菌時代でのより適正な治療法を開発し、海外を含めた医療現場で活用する。
ヘリコバクターピロリ菌が薬剤耐性を獲得するメカニズム、なかでもクラリスロマイシン(CAM)への耐性機構は、過去15 年以上にわたり国内外において研究の進展は認めていない。CAM 耐性は、ピロリ菌23SrRNA 遺伝子の単一塩基変異により生じるとされているが、この変異のみでCAM 耐性機構をすべて説明出来ない。全ゲノムシークエンス法により、ピロリ菌ゲノムに隠されているあらゆる遺伝子変化を検出し、潜在的な薬剤耐性機構の解明が可能である。
申請者は、クラリスロマイシン耐性ピロリ菌12 株(23S rRNA 遺伝子変異株)の全ゲノムシークエンスを実施し、既知の23S rRNA 遺伝子変異に加え、菌体内外への多薬剤輸送を担う遺伝子群に特異的なアミノ酸置換が存在することを確認し、薬剤耐性をきたす潜在的なゲノム変化を見出し、成果を欧米学術誌へ発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全ゲノムシークエンスおよびデータ解析は順調であり、既に成果を欧米学術誌へ発表した、現在は全ゲノムデータを活用し、他の病原遺伝子とその由来する疾患の関連を解析し、新たな菌側マーカーの解明に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
中華人民共和国およびベトナムの大学や病院と共同し、海外ピロリ菌の収集を実施している。浙江大学(浙江省、杭州市)と共同し、中国人由来ピロリ菌59 株を収集した。チョーライ病院(ホーチミン市)との共同により、ベトナム人由来ピロリ菌33 株を収集した。これらピロリ菌からのゲノム抽出は既に実施し、ベトナム人由来5株、中国人由来7株の全ゲノムシークエンスは終了している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
円高の影響をうけ、シークエンス試薬の購入価格が安値で推移したため、当初の研究計画と齟齬が生じた。現在は円安のため、シークエンス試薬の価格は高騰している。
|
次年度使用額の使用計画 |
米国製のシークエンス試薬の購入に当てる。
|