研究課題/領域番号 |
26460215
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小野 俊介 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (40345591)
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研究分担者 |
草間 真紀子 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (80313146) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 新薬開発 / グローバル開発戦略 / 国際共同試験 / 新薬アクセス / 健康アウトカム |
研究実績の概要 |
平成29年度は、平成28年度までに構築した新薬承認データベースをさらに拡充し、グローバル開発を含む多様化した現在の新薬開発様態と市販後の安全性アウトカム(重篤な副作用発現など)の関係を多変量解析等の手法で探索した。また、特に新薬開発の様態が時代によって大きく変遷していることに着目し、新薬開発(臨床試験の実施)時期によって得られる有効性アウトカムが、時代ごとの患者集団及び医療環境の特徴、時代によって異なる各種の試験デザインの特徴などとどのように関係しているかを分析した。 分析の結果、市販後の重篤な副作用の発現等については、日本市場への導入の遅れが安全性イベントの減少とつながっていること、ブリッジング戦略の採用は国内での安全性イベントの増加と関連していることなど、市販後の安全性アウトカムが製薬企業が採用したグローバル開発の具体的な戦略の選択によって影響を受けていることが示された。また、過去に日本で承認された降圧薬の検証試験を用いたメタアナリシスを実施した結果、過去数十年の日本人患者集団の特徴(平均血圧等)、時代ごとに採用されていた試験デザイン(被験者採用基準等)、対照薬の種類などによって試験結果(降圧量など)が異なること、すなわち、公表論文や市販後の添付文書に記載される有効性のアウトカムに試験を企画・実施する企業・研究者が一定の介入を行う余地があることが示された。 これらの結果は、グローバル開発を含む企業の開発戦略の選択が日本の患者の健康アウトカムに実質的に影響を与えていること、さらに、医療情報として提供されている薬剤の臨床アウトカムを現在の医療・患者の文脈で評価・活用する際には、薬剤が開発された時代背景(当時の患者集団、医薬品市場の構成等)をあわせ考慮すべきであることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は医薬品が影響を与える広義の健康アウトカムを幅広く議論するためのエビデンスを提供することである。当該目的に照らして、新薬の有効性・安全性を(単一の評価項目ではなく)様々な角度・指標から分析する必要があるが、本年度は昨年度までに蓄積したデータベースを活用して、安全性・有効性の双方について従来の研究(昨年度までの本研究を含む)とは異なる視点から分析を進めることができた。 これは研究開始時に設定した大枠としての計画、および昨年度に設定した計画をほぼ達成するものであり、来年度(最終年度)の課題解決、提言策定につなげることができる。 以上の実施状況に鑑み、本研究はおおむね順調に進捗しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究開始時点(平成26年度)から直近までに収集・蓄積した新薬開発・承認データを最終年度(平成30年度)においても可能な限りアップデートし、特に最近顕著な新薬開発のトレンド(例:バイオ医薬品、新作用機序の抗がん剤)を踏まえた分析を継続する。新薬開発の成功・失敗と試験デザインの関係などを、企業の開発戦略(グローバル開発戦略を含む)を視野において分析する。 日本(企業)の新薬開発に大きな影響を与える米国の新薬研究開発状況の分析を行うほか、副作用報告システムの特徴・効率を把握するため、米国FAERS等のデータベースからの情報収集と分析を行う。 本研究開始時点から得られた成果を総合的に分析し、日本の患者が新薬の使用によって得られる健康ベネフィット・リスクの最適化を図るために必要な政策・措置(ガイドラインの策定・改訂)のあり方を提言する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に行った定量分析が主として前年度までに収集・構築したデータによるものとなったため(どこかの時点までに絞った分析を行う必要があるため)、予定していたデータ収集(最新データベースからのデータ・書籍購入等)を次年度のデータ収集と合わせて行うこととした。 次年度においては、これらの費用を合わせて複数のソースからより網羅的なデータ収集を実施し、データソースの違いによる結果の信頼性への影響なども併せて確認する予定である。
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