研究課題/領域番号 |
26460218
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
永井 純也 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (20301301)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腎近位尿細管上皮細胞 / 低酸素誘導因子HIF-1 / アルブミン / 乳癌耐性タンパク質BCRP / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
糸球体バリア機能に伴う尿細管管腔中への血清アルブミンの漏出は、近位尿細管上皮細胞に様々な影響を及ぼすことが知られている。近年、近位尿細管上皮細胞を血清アルブミンで曝露することにより転写因子であるNF-kBやAP-1の活性化が起こることが報告されており、これら転写因子の活性化が尿細管上皮細胞障害の進行に関与していることが示唆されている。一方、我々は血清アルブミン処理により低酸素誘導因子HIF-1が活性化されることを見い出しているが、その病態生理学的意義については不明である。 今年度は、特に、HIF-1標的遺伝子産物であるABCトランスポーターbreast cancer resistance protein (BCRP)に着目して、HIF-1誘導剤CoCl2やヒト血清アルブミン(HSA)で処理した腎尿細管上皮細胞における細胞障害性BCRP基質の影響について解析した。 実験には、ヒト腎近位尿細管上皮由来HK-2細胞を用いた。細胞のviabilityの評価は、WST-1試薬を用いた比色定量によって行った。mRNA発現変動解析はリアルタイムPCR法によって行った。ミトキサントロンやHoechst33342のBCRP介在性輸送は、BCRP阻害剤Ko143感受性の細胞内蓄積を蛍光光度法により評価した。 HK-2細胞にCoCl2やHSAを処理することにより、BCRP mRNAの発現誘導が認められるとともに、BCRPを介したミトキサントロンやHoechst33342の細胞内からの排出の亢進が認められた。さらに、ミトキサントロン処理による細胞障害に及ぼすCoCl2処理の影響について調べたところ、CoCl2処理はミトキサントロンによる細胞障害を軽減することを認めた。以上、腎近位尿細管上皮細胞においてHIF-1依存的にBCRPは活性化され、その活性化は細胞保護に働く可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養腎尿細管上皮細胞を用いたin vitro実験では比較的順調に研究が進み、新たな興味ある知見が得られた。最終年度では、in vivoでの解析も積極的に進め、in vitroで得られた結果との統合を図っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究展開は、申請書に記載した研究計画に沿って進めていく予定である。まずは、アルブミン処理によって観察されるHIF-1活性化を引き起こす脂肪酸を同定する。加えて、脂肪酸をリガンドとするPPARgレセプターの関与を調べるため、PPARgアゴニストによるHIF-1活性化およびその標的遺伝子の発現および機能変動を調べる。さらには、腎障害性薬物投与によりタンパク尿を誘発させた実験動物を用いて、in vivoにおいて腎におけるアルブミン誘発HIF-1活性化が観察されるかについて検討することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の後半に当初予定していた実験を次年度に行うことになり、その実験に充てる費用を年度をまたいで持ちこすことになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、試薬や消耗品を購入するための物品費に助成金の大半を充てる。また、平成27年度の持ち越し分も、その物品費に組み込んで使用する予定である。また、論文投稿に必要な英文校正の費用は人件費・謝金として、また論文掲載料などはその他の項目から拠出する予定である。
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