本研究は、同一薬効成分を有するものの製剤中の添加剤が異なる医薬品をヒトに使用する場合の薬剤性肝障害の発症リスクを予測する評価系(T-LEX法)開発研究を深化させ、ヒト肝キメラマウスを用いた基礎実験の結果を医薬品の大規模ヒト有害事象データベース解析に基づく臨床情報と関連づけることで本法を確立し、後発医薬品の薬剤性肝障害リスクに関する科学的情報の構築を行うことが目的である。 そのため連携研究者(栄田敏之教授、佐々木均教授)や研究協力者である島田卓研究員(フェニックスバイオ)、長塚伸一郎研究員(積水メディカル)、立木秀尚研究員(東和薬品)らと研究チームを組織し、平成28年度はこれまで行ったヒト肝キメラマウスを用いたヒト肝遺伝子発現解析情報と肝障害に関する有害事象解析情報との関連性の比較分析結果をまとめる事に加え、T-LEX法を市販直後および新規開発中の後発医薬品で肝障害の副作用が問題となっている医薬品(B型肝炎ウイルス治療薬のエンテカビル製剤など)の製剤評価へ応用した。また、当初計画には無かった研究の成果として、T-LEX法で評価した医薬品のヒト肝mRNA発現量の変動に関する網羅的データ解析結果から、肝障害促進因子のmRNA量を大幅に低下させる既存医薬品成分の探索が行えることを見出した。これは肝疾患に対する新規治療薬の探索研究分野へのT-LEX法の応用性を示唆する成果である。 以上、3年間の研究により、当初計画どおりT-LEX法の汎用性を確立し、安全性情報が欠如している後発医薬品の薬剤性肝障害リスクに関する様々な科学的情報を構築・発信することができた。
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