研究課題/領域番号 |
26460221
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
入江 徹美 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (60150546)
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研究分担者 |
松尾 宗明 佐賀大学, 医学部, 教授 (20219398)
中潟 直己 熊本大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30159058)
有馬 英俊 熊本大学, その他の研究科, 教授 (50260964)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Niemann-Pick病Type C / cyclodextrin |
研究実績の概要 |
Niemann-Pick病Type C (NPC)は、コレステロール等の細胞内の脂質代謝・転送の破綻に起因する稀少難病である。申請者らは、最近、世界に先駆け NPC 患児に 2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin(HPBCD)脳室内投与療法を施行し、静脈内投与を上回る有効性を確認した。一方で、HPBCDの脳室内への至適投与条件および安全性に関する情報は極めて少ない。本研究は、佐賀大学医学部附属病院にて5年間継続しているNPC患児へのHPBCD 療法に対する科学的根拠を提供し、治療の最適化を図ることを目的としている。 平成26年度は、これまでに確立した評価系を基に、以下の知見を得て臨床現場にフィードバックした。1)NPC病モデルマウスにHPBCDを単回脳室内投与することで有意な生存期間延長、運動機能障害の抑制および小脳プルキンエ細胞数減少の抑制効果が見られた。2)HPBCD脳室内投与の有効性は8週齢時投与と比較し、より早期に投与する4週齢時投与の方が優れていた。3)健常なマウスにおいて、HPBCD脳室内投与の速度がある一定以上の速度を超過すると、収縮期血圧の低下、体重減少、異常体温上昇などが見られた。 現在、cyclodextrin(CD)の作用機構の解明並びに脳室内投与に最適なCD誘導体の探索を継続している。さらに、基礎研究の成果を臨床に逐次フィードバックしつつ、CDの至適投与条件を確立するための協働作業を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の予定であったNPC病態モデルマウスにおけるHPBCD脳室内投与の評価系を確立しただけでなく、「研究実績の概要」に記載したような多くの新知見を得ることができた。特筆すべき成果はNPC病様の症状が観察されるよりも早期の4週例時点での単回脳室内投与が優れた有効性を示す点ことである。さらに有効性の評価だけではなく、HPBCD脳室内投与の安全性に関して、マウスにおけるHPBCDの脳室内投与速度と有害事象の関連を示唆する知見を得ることができた。以上より、当初の計画以上に順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1)脳室内投与に最適なCD誘導体の探索 平成26年度に確立したin vivo 評価系を用い、将来的な発展性を考慮して申請者らが保有するシクロデキストリンライブラリーの中から、有効性・安全性に優れたより脳室内投与に最適なCD誘導体の探索を実施する。 2)HPBCDの細胞内取込および作用機構の解明 これまでに実施してきたHPLCポストカラム法よりも高感度測定が可能なLC/MSを用いた細胞内HPBCD量測定技術を確立し、HPBCDの細胞内取込および作用機構の検討を実施する。 3)NPC 患児における HPBCD 脳室内投与条件の最適化 平成27年度以降も得られた基礎研究の成果を適時臨床現場にフィードバックし、臨床におけるHPBCDの至適投与法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、細胞内cyclodextrin濃度のLC/MS測定費用として使用する予定であったが、サンプルは回収しているものの、本年度内に測定できなかったため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の使用目的どおり、細胞内cyclodextrin濃度のLC/MS測定費用として次年度に使用する。
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