研究課題/領域番号 |
26460224
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
野口 修治 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (60237823)
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研究分担者 |
岩尾 康範 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (30433022)
板井 茂 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (80453059)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ粒子薬物担体 / 難溶性薬物 / 可溶化 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,難溶性薬物を含有したキューボソーム製剤処方と製造方法の確立,および性状解析を進めた。難溶性モデル薬物として,複数の芳香環を有する抗腫瘍薬および天然物由来生理活性フラボノイドの二種を用い,またキューボソーム薬物担体の基剤として二種の脂質を用いた。抗腫瘍薬の場合,添加剤としてイオン性界面活性剤を添加すると,抗腫瘍薬の溶解度が10倍以上,フラボノイドを用いた場合では,溶解度が6倍以上に向上させることができ,薬物内封率は共に約90%と高い値を示した。キュービック相は,抗腫瘍薬のキュービック製剤の場合は空間群Pn3m,フラボノイドの場合は空間群Im3mを維持していていることがX線小角散乱法により確認された。動的光散乱法により,どちらのキュービック製剤も,粒子径は約90 nmの単分散状態であることが明らかとなり,その状態は抗腫瘍薬のキュービック製剤の場合は少なくとも4日間,フラボノイドのキューボソーム製剤の場合は2週間以上安定であった。モデル薬物として用いた抗腫瘍薬は,生理的条件下であるpH7.4では平衡反応により加水分解して不活性型の割合が90%以上となってしまう問題点があったが,抗腫瘍薬の溶解度を向上させる効果のある添加剤を加えたキューボソームに内封して製剤化したものでは,活性型の割合を90%以上に安定的に保たれることが明らかとなり,添加剤を用いた場合でもキューボソーム製剤化により薬物の安定性を向上させることができることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
キューボソーム製剤の処方と製造方法の確立については,二種の高難溶性モデル薬物の溶解度をともに従来報告されている製剤処方よりも高い値まで向上させることができており,内封率も非常に高く,再現性も良いことから,当初の目的を達成できたと判断している。 キューボソーム製剤の性状解析については,薬物および添加剤を内封した場合でも,粒子径や多分散度,キュービック相の空間群は変化しないことを,X線小角散乱法と動的光散乱法により定量的に明らかにしているため,当初の目的を達成できたと判断している。 製造方法を確立したキューボソーム製剤については,製造後の安定性の評価まで本年度内に一部進めることができ,今後のin vivo実験を進める上で,キューボソーム製剤は充分安定であることが示唆された。また,添加剤を用いたキューボソーム製剤化により不安定なモデル薬物の安定化を図ることができることも明らかにした。これらの点については,当初の計画以上に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,キューボソーム製剤の処方最適化を引き続き進める。特に添加剤に着目し,より多様な化学構造を持つ添加剤を利用することでキューボソーム製剤の高難溶性薬物可溶化能をさらに高められる処方を検索し,同製剤の構造物性解析を行う。 また,当初の予定通り,生体内を想定した条件下におけるキューボソーム製剤の安定性評価を行い,さらに,キューボソーム製剤をラットなどの実験動物に投与し in vivo の薬物動態評価を開始する。
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