研究課題
高難溶性薬物の溶解性向上を簡便に図ることができる新規薬物担体として,キュービック相(立法液晶相)をもつキューボソーム製剤の評価を進めた。高難溶性モデル薬物として,複数の芳香環を有する抗腫瘍薬SN-38を,基剤としてフィタントリオールを用いた場合,添加剤として陽イオン性界面活性剤を添加すると,SN-38のみかけの溶解度が14-15倍向上することが明らかとなった。薬物内封率は約90%と高い値であり,X線小角散乱法によりキュービック相の空間群はPn3mであること,動的光散乱法により粒子径は約100-150 nmの単分散状態であることも明らかとなった。このことから,EPR効果による腫瘍細胞特異的な薬物送達にも応用できる可能性が考えられた。SN-38は生理的条件のpHでは溶液中でラクトン環部分が数時間以内に加水分解されて不活性型になる不安定性が大きな問題であったが,キューボソーム製剤化することで,加水分解反応を10%程度以下に抑制でき,キューボソーム製剤は医薬品有効成分の安定化も図れることが明らかとなった。さらに,キューボソーム製剤の添加剤として疎水性直鎖炭素鎖の長さが異なる種々のα-モノグリセリドを用いた処方で製剤物性を検討したところ,キュービック相が維持されたまま溶解性向上能が変化していた。また,基剤として生体親和性の高いモノオレインを用いたキューボソーム製剤の検討も行った。難溶性のモデル医薬品としてスピロノラクトンとニフェジピンを用いた場合,溶解性が向上すると共に,経口投与した場合のAUCが従来製剤よりも数倍以上に向上した。以上の結果より,キューボソーム製剤は,難溶性薬物の可溶性と安定性を向上させ,吸収も高められ,また処方に種々の添加剤を用いることで様々な種類の難溶性薬物の溶解性向上を図れる薬物担体として,広く応用できることが示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (2件)
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