本年度は、これまでに検討してきたセラキルアルコールを用いて調製したヘキサゴナル液晶の水分散体であるへキソソーム(HEX)の薬物経皮吸収性改善のメカニズムについて、以下の二つの方法で検討した。 1.共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光標識HEXの皮膚浸透性評価 ヘキサゴナル液晶の脂質鎖のモデルとして赤色蛍光物質のローダミンが結合したリン脂質、脂溶性薬物のモデルとして緑色蛍光をもつクマリン6をそれぞれ構成成分の1および0.05%封入した蛍光標識FLU封入HEXを調製し、フランツセルにセットしたヘアレスマウス皮膚に適用した。適用から0.5および2時間後の皮膚切片を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、0.5時間後ではローダミン結合リン脂質とクマリン6は角層表面に存在していたが、2時間後ではクマリン6は表皮まで浸透していたもののローダミン結合リン脂質は角層にとどまっていた。よって、封入薬物は角層でへキソソームから放出されていることが示唆された。 2.放射光X線回折測定による角層浸透過程におけるフルルビプロフェン(FLU)封入HEXと角層の相互作用評価 SPring-8のBL40B2を使用し、フルルビプロフェン封入HEXをヘアレスマウス角層に適用したところ、適用後に細胞間脂質の長周期ラメラ構造の膨潤が認められた。また、適用後にHEX由来のピークが二つに分裂した。このことから適用したHEXは長周期ラメラの構造を浸透過程で乱すこと、また、角層表面でHEXがフルルビプロフェンを放出することによりHEXのピークが二つに分裂することが示唆された。
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