研究課題
閉経前女性の心血管疾患発症率は男性より著しく低い.これには女性ホルモンの関与が考えられている.しかし,糖尿病を発症すると女性の優位性が消失することが知られている.糖尿病になることで,女性は男性とは異なる血管の変化が生じていることが考えられている.女性の心血管病が予後不良な理由として,冠動脈が解剖学的に細いこと,閉経後の肥満,健康診断を受ける機会が少なく発見が遅れることなどが考えらえている.しかし,女性糖尿病患者の血管障害のメカニズムは十分に明らかにされておらず,性差を考慮した治療が実施されるには至っていない.本研究の目的は,モデル動物を用いた血管における活性酸素産生増加についての検討と,ヒトの酸化ストレスと生活習慣の調査により,糖尿病による血管障害発症メカニズムの性差と,生活習慣による危険因子を明らかにし,心血管病治療と予防方法開発につなげることである.女性の生活習慣については,アンケートを作成した.アンケートの調査内容は,健康診断の有無,菓子やジュースの習慣,運動習慣,余暇,睡眠,育児,介護,ストレスについてである.希望者にはHbA1cの測定も行った.女性にとって健診受診を阻む因子は家事,育児等で自分の時間がとれないこと,男性よりも経済的負担を重視することであることが明らかとなった.薬局での簡易な検体測定は短時間で安価であることから,女性の受診勧奨につなげることができる可能性が示唆された.糖尿病モデル動物はStreotozocin(STZ)をSprague-Dawley(SD)ラットに投与して作製した.血管内皮機能は血流計を用いて反応性充血にて評価した.雄性ラットについては16週齢で血管内皮機能の低下が現れ始めた.雌性ラットに関しては40週齢から血管内皮機能の低下が現れ始めた.以上のことから,雌性は雄性より血管内皮機能低下時期が遅いことが明らかとなった.
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