研究課題/領域番号 |
26460229
|
研究機関 | 北海道薬科大学 |
研究代表者 |
戸田 貴大 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (00254706)
|
研究分担者 |
猪爪 信夫 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (10191892)
早川 達 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (50337044)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エポキシエイコサトリエン類 / アンジオテンシンII受容体拮抗薬 / 血清中濃度 / P450(CYP) / アラキドン酸 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARBs)服用患者におけるアラキドン酸代謝物である血清中エポキシエイコサトリエン酸類(EETs)濃度と、ARBsの有害作用として認められている心血管系イベント発症との関連性について評価することを目的としている。 当研究室で開発した、LC-MS/MSによるヒト血清におけるEETsおよびその代謝物のジヒドロキシエイコサトリエン酸類(DHETs)同時測定法を用いて、引き続き、患者におけるEETsおよびDHETs濃度を測定した。2016年3月31日現在で、ARBs服用患者86名、非服用患者92名の血清中EETsおよびDHETs濃度を測定済みである。 2016年3月27~29日に横浜で開催された日本薬学会第136年会では、発表申込時までのデータであるARBs服用患者71名、非服用患者61名の測定結果を用いた検討について報告した。ARBs服用患者における血清中エイコサノイド類濃度(EETsとDHETsの総和)の中央値は0.499 ng/mLであり、非服用患者(0.685 ng/mL)より低値であったが有意差は認められなかった(p=0.206)。しかし、スタチン薬を併用するARBs服用患者においてエイコサノイド類濃度の低下傾向が見られた(p=0.056)。 また、ARBs服用に関わらず高血圧患者では血清中エイコサノイド類濃度が有意に低下していた(ARB非服用非高血圧患者(中央値0.861 ng/mL)に対しARB非服用高血圧患者で0.474 ng/mL(p=0.032)、ARB服用高血圧患者で0.499 ng/mL(p=0.044))。これより、エイコサノイド類の濃度低下が高血圧の一因となり得ることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者例数については、当初の目的であるARBs服用群、非服用群各100名にかなり近づいてきた。しかしながら、服用ARBsごとの血清中エイコサノイド類濃度の違いや、血清中エイコサノイド類濃度に及ぼす患者背景の影響、血清中エイコサノイド類濃度と心血管系イベント発症との関連性についても検討するためには、各群100名では例数が不十分であることから、目標患者数を各群200名とし、採血・測定を行う(共同研究施設である医療法人渓仁会手稲渓仁会病院の倫理委員会に申請、承認済み)。電子カルテからの患者情報の収集も進んでいるが、併用薬、高血圧以外の患者背景に関する検討までは到達せず、中間報告としての論文化には至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
目標例数である各群200名に向けて血清中濃度測定の例数を増やす。それと同時に、服用ARBsごとの血清中エイコサノイド類濃度の違いや、血清中エイコサノイド類濃度に及ぼす患者背景の影響、血清中エイコサノイド類濃度と心血管系イベント発症との関連性についても検討する。これら解析の結果については平成28年12月をめどにまとめ、適切な学会において発表するとともに論文化し投稿する。論文化にあたっては、ARBsのエイコサノイド類濃度への影響および心血管系イベント発症との関連性についてまとめるのはもちろんのこと、スタチン薬のエイコサノイド類濃度への影響や、血清中エイコサノイド類濃度と高血圧などの疾患との関係などの観点からもまとめる。
|